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僕はなぜB'zファンになったのだろう

「音楽はCD音源で十分」

 僕は25歳までこの価値観で音楽と接してきた。元々音楽には疎く、お気に入りのアーティストはいなかった。たまたま見ていたアニメやドラマの主題歌が気になって、何度も聴くうちにCDが欲しくなって購入することはあったが、アーティストへのこだわりはなかった。今回話していくB'zについても当時は例外ではなく、映画名探偵コナンの主題歌を聴いたり、シングル「愛のバクダン」を購入する程度だった。他のアニソンと同じ位置づけだったと思う。むしろ学生時代はAKB48の方が積極的に聴いていたのではないだろうか。友人らとAKB48の曲をカラオケで歌いまくる奇行も今思えば懐かしい。そんな自分がなぜB'z一筋になったのか、35周年のメモリアルイヤーを前に語ってみたくなった。

❙ 出会いからファンクラブ加入まで

 B'zとの最初の出会いは中学時代(おそらく2003年)に遡る。「劇場版 名探偵コナン ベイカー街の亡霊」のテレビ放送を見たときだと思う。その映画の主題歌が『Everlasting』だった。また、同じ中学時代にキウイのCMを見て『愛のバクダン』のCDを購入した。その後も名探偵コナンの映画の主題歌となった曲を聴くことはあったが、それ以上に聴くことはなかった。
 時を経て、僕も社会人となり2年目の秋。何がきっかけとなったかは覚えていないが、学生時代の友人からB'zのライブDVDを借りることになる。それが『B'z LIVE-GYM Pleasure 2013 ENDLESS SUMMER -XXV BEST-【完全盤】』だった。このDVDは、冒頭の一言「音楽はCD音源で十分」という僕の固定観念を覆すには十分過ぎた。僕が衝撃を受けたのはこのライブで後半に差し掛かる場面で演奏されている『LOVE PHANTOM』だった。
 少し話が逸れる。LOVE PHANTOMと聞くと、多くの方が「イントロが長い」か「ライブで稲葉さんが高所からダイブする」の印象をお持ちだと思う。しかし、僕の場合は飛び降りる演出の無い、"エンサマのLOVE PHANTOM" が最も印象的であり、ファンクラブ加入のきっかけとなった最大の要因である。
 このライブで演奏された LOVE PHANTOM が好きな理由は二つある。一つ目は稲葉さんのパフォーマンス、二つ目はイントロが生演奏であること。
 一つ目の理由である稲葉さんのパフォーマンスで、僕は衝撃を受けた。イントロが終わって頭のサビが始まると、暗闇から稲葉さんが登場したかと思えば、ほとんど声がブレずにステージの端まで全力疾走で頭のサビを歌い切った。当時の御年50手前。失礼な表現をすると、世間一般ではオジサンと呼ぶに相応しい年齢の男性。そのオジサンが、CD音源より遥かに力強い声量かつ全力疾走でサビを歌っている。一瞬で虜になった。元々僕はカラオケ好きで高音を出すのも得意、友人よりも歌は上手くはないが声は出る方だった。しかし、ジャンプしたり動きながら歌うとどうしても声がブレる。それをこのレジェンドは僕の倍の年齢かつ、ライブの後半に差し掛かる場面で全力疾走しながらCD音源以上のパフォーマンスを出せる。「この人のように何歳でも衰え知らずでありたい」「追いかけ続けたい」と思うようになった。

 それから、このライブでの LOVE PHANTOM が好きな理由の二つ目はイントロがギター生演奏であるところ。これはファンになってしばらくしてから気づいたのだが、CD音源でもイントロでギターは使われていないように聴こえる。しかし、このライブでのLOVE PHANTOMは、頭の一音目から松本さんの重厚感のある音から始まり、サポートギター大賀好修さん、ベースのBarry Sparksさんとのイントロがたまらない。ライブならではの演出にも「CD音源を超えた」音楽を感じることができる。

 僕はENDLESS SUMMERのライブDVDを見終わって間もなくB'z Party(ファンクラブ)に加入した。この年が2015年、初めてB'zの音楽に触れてから13年も経過していた。B'zの30年以上の歴史の中で、僕がB'zと出会ったもののあまり触れていなかったこの13年の間は、おそらく最もハードな楽曲が多く、またとてつもないペースで名曲の数々がリリースされているように感じている。実際に僕はこのあまり触れていなかった13年ほどの間にリリースされた曲やライブに最も関心を寄せている。ちょうど『B’z SHOWCASE 2020 -5 ERAS 8820- Day4』で演奏された曲たちが一番好きだ。だからこそ、なぜもっと早くB'zの良さに気づけなかったのか、僕の失われた13年に後悔の波が押し寄せる。

❙ B'zの曲を時代に逆走して触れる

 友人にライブDVDを借りて、すぐにファンクラブに加入する。当然ライブに行きたくなったので、次のライブはいつかと調べてみた。すると、ちょうど『B’z LIVE-GYM 2015 -EPIC NIGHT-』が終わったところだった。何ともタイミングの悪い… しかしライブに行くにも、とにかくB'zの曲を知ることから始めないといけないと思い、古本市場やブックオフ、Amazonで中古のCDやDVDを買い漁った。
 まずは最近の曲から知ろうと『EPIC DAY』『C'mon』『MAGIC』『ACTION』と徐々に時を遡るようにアルバムを入手して、とにかく聴きまくったように思う。当時一人暮らしの社会人で、平日の夜は時間が有り余っていた。友人からライブDVDを借りるも、借りているだけでは我慢できず、結局最初に借りたENDLESS SUMMERも友人に返却後、自分で購入した。
 それから『MONSTER』まで手を伸ばしたところで、友人の繋がりで10歳ほど年上のまさにB'z世代の方と知り合いになった。その方はもうB'zはほとんど聴いていないということで、お持ちだった'90年代から2000年過ぎくらいまでのアルバムを一通り借りることができた。こればかりは本当に幸運だったと思う。友人含めて周りの方々のおかげでファンクラブに加入してから半年ほどで25年分のアルバムはほぼ網羅することができた。
 さらに、2016年にHuluで稲葉さんのソロライブ『Koshi Inaba LIVE 2016 ~enIII~』の生配信を見ることができ、ソロのアルバムもかき集めた。

❙ カラオケでひたすら歌いまくる狂喜乱舞の日々

 一人暮らしで彼女はおろか、気軽に会える友人も少ない場所に住んでいたこともあり、平日は週1回のペースで最寄り駅のカラオケに通った。週1のカラオケでは夕食も兼ねていたため、仕事上がりそのままにカラオケに駆け込み18時から22時くらいまで約4時間B'zの曲のみを歌いまくる日々を過ごしていた。
 その後、転職などで環境が変化し、カラオケ自体のペースは減るものの、いわゆるヒトカラにどんどん熱が入っていく。休日に一人の時間ができれば、カラオケ昼間のフリータイムに入り浸り、エンドレスにB'zを歌い続けた。1日最大84曲歌った日もある。

<2018年にカラオケで1日に84曲歌った履歴>

 決して歌は上手くはない。しかし、学生時代にAKB48の曲を歌いまくっていたおかげか、70~80曲を1日で歌えるようになっていた。ただ冷静に振り返ると、カラオケで一人、稲葉さんを意識した歌い方で激しく歌い舞っている姿は何とも恥ずかしい限りである。

❙ ライブ参戦して感じたこと

 ライブに行くと感涙してしまうほど、曲に酔いしれることができる。僕が聴きたかった曲が演奏されたり、それまで聴いてきた音源とは違うアレンジで演奏されたり、またその時の自分の感情と曲がリンクした時には思わず涙が溢れる。それくらいB'zというバンドの演奏には、凄まじいミエナイチカラがあるように感じる。稲葉さんのインタビューでは、「手を抜かない」という言葉がしばしば見られる。手を抜かないことは目に見えないものなのだが、それがエネルギーとして観客の全身に伝わってくるような印象を受けるのだ。 

❙ なぜここまでのめり込めたのか

 なぜそれまで音楽に強い関心を示していなかった人間が、B'zにのめり込むようになったのだろうか。僕がどうしてもB'zを追いかけずにはいられない理由を考えたところ、二つ思い当たる理由があった。両方とも前述している部分もあるが、一つ目は稲葉浩志さんという一人のボーカリストへの憧れと、一人の人間としての尊敬だ。
 ENDLESS SUMMERで見たパフォーマンスは、未だに僕の脳裏に一瞬に鮮明に思い出される。さすがの稲葉さんも年を重ねて『B'z LIVE-GYM Pleasure 2008 -GLORY DAYS-』の頃のようなハードナンバーをメドレーで歌い続けてるというセットリストは見られなくなったが、それでもなお『B’z LIVE-GYM 2019 -Whole Lotta NEW LOVE-』と『B’z LIVE-GYM 2022 -Highway X-』とライブ参戦したが、衰えを微塵も感じさせない圧倒的なパフォーマンスは常に期待以上のものをファンに提供してくれていると実感するばかりである。さらに稲葉さんはライブのMCでファンを気遣う言葉が数多く聞かれる。その度に激しい曲からは想像できないくらい腰の低さを感じる。さらにインタビューなどでは「手を抜かないこと」や「後でやっておいた方が良かったと思わないように」と言ったプロとしての意識を感じ取ることができる。このあたりに一人のボーカリストを超えた人として尊敬できる要素があり、僕はそれに惹かれているのかもしれない。
 
 二つ目はツアーごとに変化するアレンジで飽きさせないところだ。ほぼ毎ツアー演奏している『ultrasoul』や『イチブトゼンブ』でさえも、ツアーのたびにギターソロやボーカルのアレンジを変化させているように感じる。それ以外にも演奏頻度の高低関係無く、演奏するたびにイントロやBメロに新たなギターアレンジが施されている。僕はこれが堪らなく好きで、ライブではできる限り日替わり曲も全部聴いておきたいと思わせてくれる。
 
 2023年35周年となるB'zはまだまだ進化を続けているように見える。一言で表現すると、凄まじい。
 音楽という一つの道を少なくとも35年以上貫き通していることが凄まじい。僕の生まれる前から活動しているのだから恐れ多い。そして、沢山のファンを抱え、常にファンに感動を与え続けている。ファンを愛し、ファンに愛される姿に僕はとても惹かれている。いくつになっても楽しそうに音楽に向き合う二人をこれからも応援し続けていきたい。
 できるなら、凄まじいB'zを最後まで見届けてから人生を終えたいものだ。



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