見出し画像

ブギ・ウギからロックンロールへ 〜 拓郎の「ホームラン・ブギ」が楽しい

(4 min read)

吉田拓郎 / ホームラン・ブギ 2003

上に掲げたこのジャケットではなにも伝わらないですけど、しょうがないですね、吉田拓郎の曲「ホームラン・ブギ 2003」。もちろん服部良一が書いて笠置シヅ子が歌った「ホームラン・ブギ」(1947)のカヴァーです。これが超楽しい!いちおう笠置のオリジナルもご紹介しておきましょう。

拓郎の「ホームラン・ブギ 2003」を知ったのはまったくの偶然で、あのころまだテレビのプロ野球中継をときたま観ていたんですけど、その番組冒頭でテーマ・ソングのようにして流れてきて、その瞬間に「なんてカッコいい曲なんだ!楽しい!」とシビレちゃったんですよね。

いまネットで調べてみたら、フジテレビ2004年のプロ野球中継テーマ・ソングだったんだとわかりました。むかしと違って21世紀ともなれば地上波でのプロ野球中継なんてガクンと放送量が減ったので、ましてやフジはあまりやらなかったように思いますから、だからあのテーマ・ソングを聴けるチャンスも少なくて、たまの偶然の再会を尊ぶ以外なかったんです。

だいたいそのプロ野球中継の冒頭で流れるときに、だれのなんという曲かテロップが出なかったように思いますから、参考にしてCDなりを買いに行くこともできず、だからフジのプロ野球中継があることをひたすら乞い願うしかなく、そのぶんますます聴けるチャンスは貴重に思えましたねえ。

いちばん上で紹介したYouTube音源は、拓郎の「ホームラン・ブギ 2003」スタジオ録音ヴァージョンではなく、ライヴ収録なんですけど、もう断然こっちのほうが楽しいんですよね。ニ本のエレキ・ギターが大活躍していて、まさしくチャック・ベリー・スタイルのロックンロールが爆発していますからね。

そう、拓郎の「ホームラン・ブギ 2003」はストレートなロックンロールなんですよね。もう笑っちゃうほど真っ正直なチャック・ベリー・スタイルのコピー。いっぽう笠置のオリジナルはジャジーなブギ・ウギでした。1947年ですからね、まだロック・ミュージックは存在しなかった時期です。

ブギ・ウギがロック(ロックンロール)のベースにあるんだということは、いまさらぼくがくりかえす必要もないことでしょう。チャック・ベリーの曲づくりやギターの弾きかたを聴けば、それがブギ・ウギのパターンをそのまま移植したものであるのは明白。直接的にはチャックはアイドルだったルイ・ジョーダンから学んだわけで、ルイはジャンプ・ミュージック(ブギ・ウギ・ベースの黒人スウィング・ジャズ)のヒット・メイカーでした。

拓郎はこのことを服部良一&笠置の「ホームラン・ブギ」に、無意識裡にかもしれないけど、応用して、ジャジーなスウィング・スタイルのブギ・ソングだったのをロック・チューンに変貌させたのでしょうね。その手腕があまりにもあざやかで、こんなにもカッコいいヴァージョンに仕上がっていることに快哉を叫びたい気分です。

前からなんどもくりかえしていますが、ジャズとロックのあいだに境目なんかないんだっていう、ひとつの立派な証拠でもありますね。

(written 2021.3.4)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?