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しんどいとき助けになる音楽(17)〜 アラン・トゥーサン

(3 min read)

Allen Toussaint / American Tunes

評価しないという向きもあることは重々承知していますが、個人的にはアラン・トゥーサンの晩年二作『ザ・ブライト・ミシシッピ』(2009)、『アメリカン・チューンズ』(16)はほんとうにお気に入りのアルバムです。

特に遺作になった『アメリカン・チューンズ』が好き。これは基本ジャズ・ピアノ作品なんですよね。前作もジャズ・アルバムでしたが管楽器がたくさん入っていました。今作ではピアノをほぼ全面的にフィーチャーし、アランの腕前を披露する内容になっているのがいいですね。

ニュー・オーリンズの音楽家らしい解釈がいたるところで聴かれるのが楽しくて、それは「ビッグ・チーフ」「ヘイ・リトル・ガール」みたいな、もとからのニュー・オーリンズ・ピースばかりでなく、ビル・エヴァンズやアール・ハインズなどニュー・オーリンズとは無縁だったジャズ・ピアニストの曲でもそうなっています。

むしろ「ビッグ・チーフ」「ヘイ・リトル・ガール」ではクラシカルなタッチもあって、なかなかエレガントに仕上がっていますが、「ワルツ・フォー・デビイ」「ロゼッタ」なんかでカリビアンな8ビートが使われています。一聴ちょっぴりビックリするような解釈なんですよね。

それでこそニュー・オーリンズらしさが出ているといえるもので、とっても楽しいですよ。それでいて紳士的なエレガンスも失っていないし、さっぱり感のある格調高い演奏になっているのがすばらしい。

そして個人的にこのアルバムの白眉は9曲目のゴットシャルク・ナンバー「Danza, Op.33」。一度目のサビ部分からぱっとアバネーラになっているのが大好きで、ぼくはとにかくアバネーラ愛好家ですからね、こういう演奏はモ〜タマランとなります。

ヨーロッパのクラシカルな舞曲ふうを基調としながらも、アバネーラでアフリカン/カリビアンなリズム・テイストをも加味していて、ジャズ・ピアノの成り立ちとはどういうものか、ニュー・オーリンズ音楽存立の根源を解き明かしたような演奏です。とにかくもう大好き!

(written 2023.8.28)

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