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蒸し暑い梅雨時期にぴったりな涼感ジャズ・ボッサ 〜 ジョアン・ドナート

(3 min read)

Joâo Donato e Seu Trio / A Bossa Muito Moderna

ブラジルのジョアン・ドナート(Joâo Donato)。最近 2 in 1で CD リイシューされたらしい片方の『A Bossa Muito Moderna』を最近聴きました。Spotify の表記では1965となっていますけど、63年のアルバムかもしれません。ジャズ・ボッサ時代の軽快な名作で、ピアノ・トリオ以外にパーカッショニストも参加しているはずです。蒸し暑いジメジメする季節にはこれ以上ピッタリ来るものはないだろうっていうようなさわやかな涼感があって、聴きやすいし、なかなかいいですよ。

このアルバムは趣味のいいジャズ・ボッサで、ジョアンはどの曲もテーマを弾き終えるとアド・リブ・パートに入っていきます。決して逸脱したり過剰な表現をすることはなく、あくまで曲の雰囲気を重視してそれをそのまま維持するように、そっとソフトに指を鍵盤に乗せていくのが印象に残りますね。ちょうどいい快適なラウンジ・ミュージックみたいで、聴いていて心地いいです。

それでもちょっぴりハードな感じがするかもなと思える演奏も混じってはいて、特にリズムですね、ドラマーとパーカッショニスト(というかこれはボンゴ奏者か)が激しいビートを刻むのに乗せ、ジョアンが弾きまくっているというに近いものだってあります。数曲そういうのがあるんですけど、なかでも特に5曲目「Sambongo」とか7「Silk Stop」なんかはそうじゃないですか。

ジョアンのばあい、そういった激しい感じの曲でも決して野卑な演奏にならないところが持ち味で、小粋でおしゃれなフィーリングはまったく失いません。リズムがボサ・ノーヴァっぽかったりサンバっぽかったりしても持ち味を変えず、ジョアンはそのまま軽快にソフトに鍵盤を叩き、この室内楽的といいますかサロン・ミュージック的なくつろぎを最高度に演出してくれるのが美点ですね。

隠し味というよりあんがい主役級というに近い活躍でこのアルバムの味を特徴づけているのがボンゴ奏者ですね。名前がわからないんですけど、ビートを下支えしているだけでなくサウンド・テクスチャー的にもいい色になっているし、もはやこれ、このトリオ、じゃなくてカルテットの演奏では中心的な要素になっているとしていいくらいだと思いますね。

(written 2020.7.6)


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