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しんどいとき助けになる音楽(50)〜 ビリー・ジョエル『52nd Street』

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Billy Joel / 52nd Street

ビリー・ジョエルの『52nd Street』(1978)はこのタイトルでもわかるようにニュー・ヨーク・ジャズをテーマにした作品。当時は一大フュージョン・ブームだったので、プロデューサーのフィル・ラモーンともどもそれを意識した新作アルバムを制作しようとなったのでしょう。

ジャズ・フュージョン好きなぼくにはうれしい内容でしたが、といってもぼくがそっち方向へのめり込むことになったのは79年以後なので、ビリー・ジョエルのこれはジャズなんてこれっぽっちも知らない時期に当時話題のニュー・リリースとして買ったのでした。

だから当時高校生のころは、ジャズとは無関係な2「オネスティ」、3「マイ・ライフ」とかがお気に入りの曲でした。これら二曲、特に前者にかんしてはちょっと恥ずかしい赤面エピソードもあのころあって、いまでも鮮明に憶えていますが、マジで恥なので書きません。

いまとなってはやっぱりA-4「ザンジバル」以後のジャズ・フュージョン・パートこそ大好き。フレディ・ハバードとかマイク・マイニエリとか、本レコード買った当初は知らない名前でしたが、サウンドを聴いてなんとなくのムードに高校生でもひたっていたかもしれませんね。

そういうジャズがテーマのアルバムなんであると理解できるようになったのはジャズ・ファンになって以後のこと。フュージョン・ブームだったこともようやく知るようになり、そうなってみると聴こえかたが変わってきました。

そうそう、フュージョンというタームは79年に登場したものだから、それ以前の作品はフュージョンではない、クロスオーヴァーであるとおっしゃる向きもありますが、ちょっとどうなんでしょう。ビリー・ジョエルのこれだって78年のリリース。

タームができるようになるすこし前からフュージョン(と呼ばれるようになる音楽)の動きはもりあがってきていたんです。そもそもタームなんてものは現象じたいが活性化してしばらく経ってから遅れて付けられるものですから。

ジャズやロックという呼称だって、これらの用語がなかったプレ時代のものはその音楽ではないなんていうことを言いはじめたら笑われますよね。用語の登場はやや遅れるもの。フュージュンということばが出てくる前からフュージョンはあったんです。

ビリー・ジョエルとフィル・ラモーンが78年に『52nd Street』というアルバムをつくって出したということだって、その立派な証拠じゃありませんか。78年にフュージョン・ブームがなかったら誕生するはずがなかった作品です。

(written 2023.11.1)

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