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空調の効いたスタバでかかっていそうなチルい 〜 イリアーヌ・イリアス

(4 min read)

Eliane Elias / Quietude

イリアーヌ・イリアス(というカナ表記でおっけ?)を一度もSpotifyで聴いたことがないのに、なぜだかこないだの新作案内プレイリスト『Release Rader』に出現した最新作『Quietude』(2022)。

このプレイリストは、聴いたことのない音楽家でもふだんのぼくの聴取傾向から勘案し向いていると判断したものを出すことがよくあるので、ってことはイリアーヌも好みなんじゃないかとAIに思われたってことだなあ。う〜ん、そんなには…。

このブラジル出身在USAのピアニスト&ヴォーカリストは、たしかぼくが大学生のころ(もうちょいあとだっけ?)から活躍し、当時はちょっとした話題で、でもいまだ現役で新作をリリースしているっていうのは案内があるまで気づかなかったというか、正直これといった興味を持ったことは生涯一度もなかったというか。

でも最近音楽の趣味が静か et おだやか寄りに傾いてきているし、そもそも人生ってどこに縁があるかわからないし、せっかくだからと聴いてみたんですよね、イリアーヌの『Quietude』。そうしたらけっこう悪くないじゃんと感じましたから、やっぱりぼくは変わったよなあ、こういう音楽、歯牙にもかけなかったのに。

ひとことにしておしゃれカフェ・ミュージックというか、たとえばぼくもよく行くスターバックスあたりの店内BGMとしてかかっていそうなムード。小洒落た <ジャズ&ボサ・ノヴァ> というふうにくくるときの音楽が好きだっていうような層があるかと思いますが、そうした室内楽としてイリアーヌの本作なんかはピッタリ。

カドがまったく立たず、丸く静かで、おだやかな凪の海のよう。むかし(といってもまだそんな長い時間は経っていないけど)「ジョイカフェ青山」っていうサイマル・ラジオ番組があったんですけど、青山奈央っていう美声の持ち主がDJで、おしゃれカフェ・タイムをいろどるジャズ&ボサ・ノヴァを選曲しかけてくれるという週一回30分。奈央さん、お元気ですか?

ビ・バップ好きのひでぷ〜(hideoさん)らといっしょに、Twitterをはじめた2009年11月からしばらくのあいだ毎週ジョイカフェを楽しんでいたんですけど、その番組でかけたらピッタリきそうな音楽ですよ、イリアーヌの本作。番組がもしまだあったなら間違いなく流れそう。

それでも8曲目「Bolinha de Papel」なんかジャズとしてまずまず聴きごたえあるし、ドリヴァル・カイーミとのデュオでしっとり聴かせるラスト11曲目「Saveiros」もいいし。

だいたいかの『ゲッツ/ジルベルト』路線なんで、あのへん近年再評価いちじるしいわけですから、イリアーヌのこうしたくつろぎサロン・ミュージックに耳を傾けるというかだらだら流してちょうどいいチルなサウンドとして楽しむのもいいんじゃないかと。

ジョイカフェを聴きはじめた2009年には、こうした室内向けのチルい音楽はまだたいした流行になっていなくて、ここ数年じゃないですかね、大きなうねりになってきているのは。ロー・ファイ(・ヒップ・ホップ)あたり、音の表層としてはかなり違うものですけど、実は本質において同種のものかもしれません。

あっ、それでイリアーヌがSpotifyの『Release Rader』に出てきたわけ〜?

(written 2022.10.22)

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