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さわやかな午後に聴くボサ・ノーヴァ 〜 アントニオ・アドルフォ&レイラ・ピニェイロ

(3 min read)

Antonio Adolfo & Leila Pinheiro / Vamos Partir Pro Mundo - a Música de Antonio Adolfo e Tibério Gaspar

ブラジル人歌手レイラ・ピニェイロがアントニオ・アドルフォのピアノ伴奏をともなってアントニオ&チベリオ・ガスパールの曲を歌った一枚『Vamos Partir Pro Mundo - a Música de Antonio Adolfo e Tibério Gaspar』(2020)。これがさわやかでやわらかで、とってもいいです。もちろんボサ・ノーヴァ作品ですけど、この春風のようなさわやかな手ごたえ、気持ちいいですね。(7/3付記)いま梅雨どきですけど。

1曲目「Dono do Mundo」でも最初のテンポ・ルバートの部分を経て本編みたいなパートに入りビートが効いてきた瞬間に実にいい気分。ふんわり軽いボサ・ノーヴァのこのビート、すばらしいです。エレキ・ギターがかなり控えめな音でそれを刻んでいて、背後にベースとドラムス。(アントニオの)ピアノがオブリガートでからみ、も〜う極上。ほんのかすかにミナス派っぽい空気感もありますね。

2曲目以後もこんな感じで、ふわっと軽いボサ・ノーヴァと、それをやわらかく刻むリズム、強すぎないアクセントや、とにかくサウンドがほどよく中庸的で、疲れていたり落ち込んでいたりするときでもこちらのメンタルをそっとやさしく撫でてくれます。いやあ、いいですね。レイラのヴォーカルもベテランならではのこなれたナチュラルさ。言うことなしです。どの曲もボサ・ノーヴァ仕立てなのはレイラの音楽性でしょう。

2曲目「Glória, Glorinha」では間奏でトランペットのソロが入りますが、それも心地いいですよね。そう、このアルバムではなにもかもがこちらを刺激しない程度のちょうどいい加減の中庸さ、やわらかさ、やさしさを極めていて、こういうのはアントニオ&チベリオの書いた楽曲の持つ資質なのか、アレンジの勝利か、主役歌手のタイプなのか、それらがあいまってのことなのか、とにかくみごとなんです。

4曲目「Sá Marina」はなかでも群を抜いてすばらしい出来でしょう。これもライト・タッチのボサ・ノーヴァなんですが、ハーモニカが使われていますよね。だれなんでしょう、とてもいい感じに響きます。曲もとてもいい。なんでも聞きかじった話ではこの曲、スティーヴィ・ワンダーがとりあげて有名にしたそうで、ぼくはそのことをちっとも知りませんでした。だからそれは聴いていないんですけど、スティーヴィが魅力を感じるのはよくわかりますよね。

そのほかアルバムは好曲ぞろいで、激しいサウンドはちっともなく、ひたすらさわやかにやわらかに、まるで五月の春風のように吹き抜ける気持ちのいい音楽。聴き込んでよし流してよし、部屋でいい雰囲気になるし極上の BGM にもなるリラクシング・ミュージックですね。春の午後にピッタリなアルバムです。(7/3付記)ブログに上げるのは梅雨どきになってしまいましたが。

(written 2020.5.6)

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