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ハード・バップではブルーズがおいしい 〜 ホレス・パーラン

(3 min read)

Horace Parlan / Up And Down

アーシーに弾きまくるジャズ・ピアニスト、ホレス・パーランのことが大好きなんですが、きょうもまた一個、『アップ・アンド・ダウン』(1961)のことを書いておきましょう。ボスのピアノ+テナー・サックス(ブッカー・アーヴィン)+ギター(グラント・グリーン)+ベース+ドラムス。

この編成だとサックスの音が目立つのはとうぜんで、実際ここでのブッカー・アーヴィンの活躍ぶりはみごと。特に1曲目「ザ・ブックス・ビート」のブックはたぶんブッカーのことでしょう、ブッカーの作曲ですしね。作曲といってもただの定型12小節ブルーズですけど、こういうのがブルー・ノート・ハード・バップのいちばん典型的なおいしさですよ。

一番手で吹きまくるブッカーのテナーが快感で、いやあ、実にいいですね。ホレスのピアノをふくむリズム・セクションも好サポート。二番手でグラントのギター・ソロ。デビューしてまだ何年も経っていない時期ですが、すでに独自のブルージー&ファンキー・スタイルは確立されています。同一フレーズ反復でもりあげるのはグラントの得意技で、こういうのは1940年代のジャンプ・ミュージック以来の伝統手法なんですよ。

そして三番手でホレス・パーランのピアノ・ソロが出ますが、やはりいつものように途中からがんがんブロック・コードを叩きアーシーに攻めていくのがなんともいえず好み。ホレスのいつもの調子で特別なことはなにもやっていませんが、こういったやりかたでファンキーにジャズを味付けするゴスペル・テイストって、ほんとうにおいしいですよね。

2曲目以後も、5曲目のバラードを除き路線はまったく変わらず、グイグイ攻めるばかり。どの曲もブルーズ形式で、ハード・バップにおけるブルーズ演奏がジャズのうまあじをかもしだしてくれる最高の時間を体験する思いです。ジャズにおけるこういったブルーズ表現はもはや過去のもので、2010年代以後は否定されているものかもしれませんけど、好きなファンはまだまだたくさんいるんで、ジャズとブルーズの関係をあんまり悪しざまに言わないでくださいね。

(written 2021.1.22)

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