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極上のイナタさ 〜 ニュー・ムーン・ジェリー・ロール・フリーダム・ロッカーズ

(4 min read)

New Moon Jelly Roll Freedom Rockers / Vol 1

萩原健太さんのブログで知りました。

ニュー・ムーン・ジェリー・ロール・フリーダム・ロッカーズ(長い)は、ジンボ・マサスとルーサー・ディッキンスン&コーディ・ディッキンスン兄弟(ノース・ミシシッピ・オール・スターズ)とが組んだユニット。ルーツ・ミュージック・プロジェクトみたいなもんですかね。

これら三名にくわえ、チャーリー・マスルワイトやアルヴィン・ヤングブラッド・ハートも参加して 10年以上も前にレコーディング済みだったアルバムが『ヴォリューム 1』(2020)らしいです。監督役を当時存命だったジム・ディキンスンがやったそう。

ルーツ・ロックっていうか、要はこのグループ、米南部に根差したブルーズ・ロックをやっているということでしょうけど、曲によっては20世紀初頭ごろのオールド・ジャズを香らせているものもあったりして、つまりまだブルーズとジャズが一体化していて、なんだかわかんないけどゴチャゴチャと猥雑だった<あのころ>の音楽をよみがえらせているということでしょうか。

だからその意味でも南部的ですね。そんなところ、アルバムの出だし1曲目から鮮明です。バンド形式の電化シカゴ・ブルーズっぽいですが、フィーリングは完璧にダウン・ホームな南部感。ブルーズ・ハープが実にイナたくてステキです。そう、こういうのをステキと思っちゃうような趣味の持ち主ですよ、ぼくは。

2曲目はなんとチャーリー・パットンの「ポニー・ブルーズ」。デルタ・スタイルのブルーズ・ギターをルーサーが弾いていますが、歌っているのはアルヴィンですね。オリジナルは弾き語りでしたが、ここではやはりドラムスも入ってバンド形式でやっています。これもクッサ〜い。

こういったクサさ、イナタさがこのアルバム全編を支配しているわけですが、いかにもなアメリカ南部的ルーツ・ブルーズ色全開ですね。1960年代後半ごろのブルーズ・ロック勢に通じる感覚もありますが、そもそもそれらだってデルタ〜シカゴ・ブルーズなどを規範にしていたわけですからね。

ちょっと都会的な雰囲気を香らせている3曲目「ナイト・タイム」を経て、故ジム・ディキンスンが歌う4曲目「カム・オン・ダウン・トゥ・マイ・ハウス」(ガス・キャノン)はグッド・タイム・ミュージック、つまりオールド・ジャジーなポップ・チューンですね。やはり猥雑なブルージーさもあります。

ヴィンテージ・ジャズを匂わせているのはこの一曲だけ。ほかは古い戦前ブルーズをそのフィーリングのまま現代化したような曲が並んでいます。異色は9曲目の「ストーン・フリー」。なんでここでジミ・ヘンドリクスが出てくるのか。

しかしこの「ストーン・フリー」もですね、もしもジミヘンが1920年代の人間だったなら?という仮説を具現化してみせたみたいなフィーリングでの演唱なんですよね。この雑で荒っぽい感じがなんともいえません。ブルーズ・ハープがこんなふうに炸裂する「ストーン・フリー」なんて、聴いたことなかったですよねえ。いやあ、うすぎたない(╹◡╹)。

(written 2020.10.22)

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