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70年代ふうなヴィンテージ・ソウル・テイスト 〜 キャット・イートン

(4 min read)

Kat Eaton / Talk To Me

萩原健太さんの紹介で知りました。

ウェールズはカーディフ生まれロンドン在住のシンガー・ソングライター、キャット・イートンのデビュー・アルバム『トーク・トゥ・ミー』(2021)がかなりいい。完璧1970年代ふうのレトロ・ソウル風味満載で、思わず頬がゆるみます。

全曲、パートナーのニック・アトキンスンがプロデュースしていて、曲も共作、ギターもニックによるものみたいです。こういった往年のソウル・ミュージック志向は、キャットというよりニックの持ち味なのかもしれません。

いずれにしても、いい感じにヴィンテージでアナログなレトロ・ポップ・ソウル・サウンド。キャットはいままで数年間にわたりシングルやEPをちょこちょこリリースし続けていて、今回のアルバムにも再録されているものがありますが録りなおしているものもあるみたい。

アルバムでは、それまでよりも1970年代ブルー・アイド・ソウルっぽい音をまっすぐめがけたコアなアプローチを聞かせている感触もあって、好感触ですね。なんたって、オープニングの1曲目「バリケード」。これはシングルで先行リリースされていたそのままですが、出だしいきなりこれがもう、ホーン陣をフィーチャーした完璧なソウル・ポップで、降参しました。

特にグッとくるのが、ほかの曲でもそうなんですが、ギター・カッティングの魅力。これはニックが弾いているそうで、そ〜れが、もうどこまでもレトロなソウル・ギターなんですよねえ。チャラ〜ンと控えめにオブリガートで入るフレーズも心憎いばかりだし、リフを演奏してもいい感じ。

2曲目の「チェッキング・イン」もギターが決まっていますし、3「ニード・ア・ウェイ・トゥ・セイ・アイ・ラヴ・ユー」なんかでもギターがリフにオブリにと大活躍。曲もぼくのフィーリングにピタッときますが、このギター・サウンド、トータル・プロデュースがあまりにもみごとですよね。

だからフロントで歌うキャットのヴォーカルの魅力というより、音楽家としてのニック・アトキンスンの志向がぼく好みなんだということかもしれません。もちろん、シンプルでオーガニックなサウンドのなかにあっても、キラリと光るメロディを書けて歌えるキャットの魅力があるから、ということなんですけどね。

(白人)ソウル・ミュージックとかブラック・ミュージックといっても、21世紀的なあたらしい流れというか、時代の潮流というか、ネオ・ソウルだとかR&B、ヒップ・ホップ・ソウルとか、そのへんの動きとはかすりもしないレトロ趣味な音楽なんですけれども、いっぽうにこうした回顧的な動きをただそれだけで楽しめるという趣味の持ち主もけっこういるわけですから、それでいいじゃないですか。

(written 2021.7.8)

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