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グルーヴ一発 〜 ルー・ドナルドスンの1970年ライヴ

(4 min read)

Lou Donaldson / The Scorpion: Live at the Cadillac Club, 1970

ルー・ドナルドスンのアルバム『ザ・スコーピオン:ライヴ・アット・ザ・キャディラック・クラブ、1970』。1970年録音なれど、発売は1995年っていう、ホント、なんか、こういうの多いですね、ブルー・ノートさん。

それはいいんですけど、このアルバム、Spotifyにあるのだとグレー・アウトしていて聴けない曲があるのは大問題ですよ。しかもそれがアルバムの目玉である1曲目「ザ・スコーピオン」と3「アリゲイター・ブーガルー」だっていうんですから、あぁ、なんてこった!

この二曲、特に愛好おくあたわざる「アリゲイター・ブーガルー」のライヴ・テイクが聴けるっていうのがこのアルバム最大のウリなのに、それでぼくもみつけたっていうのに、それを聴けなくするって、ブルー・ノートさん、こりゃあいったいどういう了見です?ケシカラン!

しょうがないので、どうしても聴きたかったぼくはiTunes Storeからダウンロードしましたよ。ふだん音楽アルバムのダウンロードはしないのに(ひと月八万円でやらなくちゃいけないっていう貧乏人だからお金のかかることはなるべく避けたい)。やっぱりストリーミングとダウンロード、違いますよね。

ともあれ、聴いてみたらやっぱり1曲目「ザ・スコーピオン」(レオ・スペンサー)と3「アリゲイター・ブーガルー」(ルー)が突出してすばらしいです。どっちもほぼ同じタイプの曲で、8ビートのジャズ・ロック調。ファンキーなソウル・ジャズっていうかブーガルー・ジャズですよね。リズム・パターンもテンポも同じような感じです。

キモになっているのは、あきらかにドラムスのイドリス・ムハンマド(レオ・モリス)。このハタハタっていう8ビート・ブーガルーのドラミングがたまらなく心地いいですよね。オルガンでレオ・スペンサーが参加しているため、ベーシストはいません。でもあんまりフット・ペダルを使っていないですよねえ。聴こえないです。代わりにっていうかイドリスのベース・ドラムが大活躍。

それからギターでメルヴィン・スパークスが参加しているのも個人的にはポイント高いです。大好きなんですよね。1960年代後半〜70年代のブルー・ノート作品、特にオルガンが入っているファンキー・ジャズ、ソウル・ジャズでメルヴィンはよく弾きました。好きなアルバムが多いですし、ファンキー&ソウルフルな脇役セッション・ギターリストとしてならグラント・グリーンより好きかも。

1曲目と3曲目の二つのソウル・ジャズ・ナンバーでは、ルー、フレッド・バラード(トランペット)のソロはあんがい控えめです。時間もそんな長くないし、内容的にもチャチャっと終わらせているといった感じ。代わってギターのメルヴィンとオルガンのレオがかなり弾いてます。それに、ソロ内容云々よりも曲のグルーヴを聴くものでしょう。

3曲目「アリゲイター・ブーガルー」では、ルー、フレッド、メルヴィンと三人のソロが終わってもまだ曲時間トータルの半分にもならないので、後半はどうなっているんだろう?と思ったら、そのうちの半分がなんとイドリスのドラムス・ソロなんですよね。なかなかめずらしいでしょう、イドリスのドラムス・ソロなんて。

それも曲のリズム、グルーヴを聴かせようっていうボスの意図がわかって、やっぱりなぁ、こういった「アリゲイター・ブーガルー」みたいなものはグルーヴ命、グルーヴ一発でノセようっていう、そういったジャズなんで、インプロ・ソロの内容が〜云々みたいな旧来的なリスナーにはつまんないかも。ノリがよくてダンサブルだし、ぼくは大好きです。

(written 2020.12.27)

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