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けっこうブルージーなパット・マシーニーの最新作『サイド・アイ NYC(V1.IV)』

(4 min read)

Pat Metheny / Side-Eye NYC (V1.IV)

こっちは最新作、こないだ出たばかりのパット・マシーニー『サイド・アイ NYC (V1.IV)』(2021)のほうは、従来のパットらしいジャズ・アルバムで、しかもなんだかパット・マシーニー・グループ的なフィーリングもあるように聴こえますよ。

パット近年のサイド・アイ・プロジェクトがどういうのものか?については、ネット上にたくさん情報があるので、ぼくがここで書いておく必要はないと思います。みなさん検索してみてください。

ともあれ『サイド・アイ NYC (V1.IV)』はライヴ・アルバムで(スタジオ収録トラックもある?)、サイド・メンバーはジェイムズ・フランシーズの鍵盤にマーカス・ギルモアのドラムス。

これって、あれですよ、1960年代に多かったオルガン・トリオ(ギター+オルガン+ドラムス)と同様の編成ですよねえ。パットはどうしていままたこういったおなじみのレトロなバンド構成を?と思うんですが、とはいえジェイムズ・フランシーズはピアノやシンセサイザーも弾いているし、音楽的には決してレトロな内容ってわけでもないのかも。

アルバムには新曲もあるものの、どちらかというとセルフ・カヴァーが中心なのはポイントかもしれません。しかも演奏はけっこうエモーショナルでブルージー。たとえば3曲目「タイムライン」、7「ターナラウンド」。これらも以前パットが過去作でやっていたものの再演です。

特にオーネット・コールマン作1959年のブルーズ楽曲「ターナラウンド」が今作ではぼくのいちばんのお気に入り。パット自身、以前からウェス・モンゴメリーの影響を隠せないところだったブルージーなフィーリングを存分に発揮しています。こういうの、好みなんですよ。このギターの音色とフレイジングを聴いてほしい。

3「タイムライン」もそうだし、5曲目「ロジャー」(新曲?)だってレイジーなブルーズ・フィーリング満点で弾きこなしているのがほんとうに気持ちよくて。これらの曲ではマーカス・ギルモアはなんでもないドラミングですけど、ジェイムズ・フランシーズがハモンド B-3似の音色を使っていて、雰囲気にピッタリですね。

上でも触れましたが、パットは前々からときおりこういったスタイルで弾くことがあって、得意ヴァリエイションの一つでしたが、今作ではそれが全開になっているんじゃないかという気がします。ジャズとブルーズの切断が叫ばれるこんにち、どうしてまたこういった演奏をくりひろげたんでしょうか。

そのほか2曲目「ベター・デイズ・アヘッド」(『レター・フロム・ホーム』)だとか4「ブライト・サイズ・ライフ」だとか、以前からのファンだったら感涙ものの選曲で、お得意のセンティメンタルなフィーリングを存分にふりまきながらアピールする姿はちょっとレトロかな?と思わないでもないものの、ぼくには心地いいです。

(written 2021.9.22)

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