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ラテン・ベースのロンドン・クラブ・ジャズ 〜 マット・ビアンコ

(3 min read)

Matt Bianco & New Cool Collective / High Anxiety

現在はマーク・ライリーひとりの個人ユニットであるマット・ビアンコ。オランダのクラブ・ジャズ・コンボ、ニュー・クール・コレクティヴと組んでの、これは三作目かな、『ハイ・アングザエティ』(2020)を聴きました。なかなかクールでいいですよ。

新作のために2020年の頭ごろ、両者はアムステルダムで合流してリハーサルを開始。しかしその途上で新型コロナ禍によるロックダウンとなってしまい、以降はアムステルダムとロンドンでネットを介してのリモート・ワークを進めたそう。オンラインであれこれやりとりしながらレコーディングが行なわれたようで、とはいえ、いっしょにワールド・ツアーまでやった仲、コンビネーションはばっちりで、完成したアンサンブルはなかなかにアクースティカルかつ躍動的です。

アルバム『ハイ・アングザエティ』は、基本クラブ・ジャズながら、ロンドンらしいカリブ風味にもあふれているといった感じでしょうか。マークは全曲で歌もやっています。演奏はニュー・クール・クレクティヴが中心なのかな。ジャズといっても楽器インプロ・ソロみたいな部分はあまりなく、グループとしての全体のグルーヴで聴かせる現代ロンドン・クラブ・ジャズという趣きです。

マット・ビアンコらしいラテン、ジャズ、R&Bなどの要素をほどよいバランスで共存させた世界観を、ホーン・セクションを大きくフィーチャーしたアナログなジャズ・コンボ・サウンドに乗せて聴かせるという以前からの基本路線を引き継ぎつつ、さらにレゲエ〜スカ調、あるいはクンビア調のアプローチを強めた感じで、カッコいいです。

そう、アルバムのだいたいどの曲も中南米のリズム・ニュアンスが聴きとれるというのが今回最大の特色で、そんな調子をベースにしつつロンドン・クラブ・ジャズ仕立てになっているといった音楽だなと思います。ニュー・クール・コレクティヴの演奏にはコンピューターやシンセサイザーを使ったような痕跡はなし。あくまで人力アナログ演奏でしょう。

(written 2021.1.17)

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