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ケニー・バレルって最高にブルージーだ 〜『ミッドナイト・ブルー』

(4 min read)

Kenny Burrell / Midnight Blue

(オリジナル・アルバムは7曲目まで)

1960年代末にジョン・マクラフリンが登場するあたりより前のジャズ・ギターのことはあまり好きじゃなく、もちろんジャンゴ・ラインハルト(がジャズかどうかはともかく)、チャーリー・クリスチャン、ウェス・モンゴメリー、グラント・グリーンなど一部例外はあるものの、それら以外は正直言ってケッと思ってきたというのが事実。主にブルーズ、ロック、ファンク系のギターリストと比較して、ということです。

だからケニー・バレルもそんなに聴いてこなかったんですけど、こないだどうしてだかふと気が向いてSpotifyで代表作『ミッドナイト・ブルー』(1963)を聴きかえしてみました。そうしたらめっちゃよくて最高なので、あれっ、こんなにいいんだっけ?とちょっと不思議に思ったというか不明を恥じたといいますか。

いやホント、ケニーの『ミッドナイト・ブルー』はいいです。なにがいいって、これは完璧にブルーズがテーマになったアルバムだからですね。オリジナル収録の全七曲はすべてブルーズ楽曲、と言いたいところですが、3「ソウル・ラメント」、6「ジー・ベイビー、エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」だけは定型じゃありません。

がしかしそれらだって実質的なコード・ワークや演奏フィーリングはブルーズと呼んでさしつかえなく、だからほぼブルーズ一本槍のアルバムなんだと言えますね。楽曲形式がブルーズばかりなだけでなく、ケニーのギター演奏のスタイルが、もうどこからどう聴いてもブルージーさ満点で。そう、ぼくいままでケニー・バレルをほとんど聴いてこなかったから、いまさらながらにビックリしているんですよね(←アホ)。

いちおう曲によってはスタンリー・タレンタインのテナー・サックスが入ったりもするものの、基本ほぼだいたいケニー+リズム・セクションだけでの演奏で、特徴はレイ・バレットがコンガで参加しているところでしょうか。1「チトリンズ・コン・カルネ」や4「ミッドナイト・ブルー」なんかでほんのり香るラテン・テイストが心地いいですね。

100%のブルージーさで満たされているような2曲目「ミュール」ではケニーとスタンリー二名とも泥くささをこれでもかと発揮していて快感ですし、ブルーズ楽曲ではないものの3「ソウル・ラメント」でも独奏のケニーはブルージーに弾いています。ブルージーさという意味ではオリジナル・アルバム・ラストの7「サタデイ・ナイト・ブルーズ」も最高のレイド・バック・ブルーズで、これだよこれ、こういう音楽を聴きたいんだよねと膝を打つ内容に快哉を叫びます。

小唄系の6「ジー・ベイビー、エイント・アイ・グッド・トゥ・ユー」も、もとからブルーズ・ナンバーと言っていいフィーリングの曲ですし、コード進行もそう。だからジャズとブルーズの両方に足を突っ込んでいるようなミュージシャンやシンガーたちにとりあげられてきたレパートリーですね。モダン・ジャズ時代における演奏は珍しいのでは?

(written 2021.3.22)

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