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インティミットなブルーズ・ロック・カヴァー集 〜 ラーキン・ポー

(6 min read)

Larkin Poe / Kindred Spirits

レベッカ(ギター、リード・ヴォーカル)とミーガン(リード・ギター、コーラス)のローヴェル姉妹がツー・トップを担う時代遅れのブルーズ・ロック・バンド、ラーキン・ポー。以前、2020年のアルバム『セルフ・メイド・マン』のことを書きました。

ここから半年も経たないうちに早くも新作がリリースされていました。やはり2020年作の『キンドレッド・スピリッツ』。これ、配信(ストリーミング/ダウンロード)でなら世界で自由に聴けますけど、フィジカルは基本ショップで扱っておらず、公式サイトのみでの販売みたいです。

そういえば、最近CDとかでもストアやショップでの流通に乗せず、みずからサイトで直販したりBandcampなどのプラットフォームを利用したりというパターンが増えてきていると思いませんか。ネットが普及したからこそですけど、これも時代の流れですよねえ。

昨年暮れにエル・スールの原田さんともしゃべったことなんですが、レコード・ショップ、CDショップはもはや役目を終えつつあるのかも。音楽は配信で聴いたり、フィジカルだって音楽家みずからサイトで直販するし、情報は公式サイトやSNSで本人から入手できるし、なんだったら当の歌手や音楽家自身ともSNSで交流できちゃうっていう。

ともあれ、ラーキン・ポーの最新作『キンドレッド・スピリッツ』はカヴァー集で、どうして前作のように自分たちで曲を書かなかったかというと、2020年以後のコロナ禍でこのバンドもYouTubeとかで多彩なカヴァー曲を着実なペースで公開し続けていたんですけど、だからたぶんそれがきっかけですよね。アルバムにして発表してみたらどうか?となったんでしょう。

収録曲とそのオリジナルを以下に一覧にしてみました。

1)ヘルハウンド・オン・マイ・トレイル(ロバート・ジョンスン、1937)
2)フライ・アウェイ(レニー・クラヴィッツ、1998)
3)ロッキン・イン・ザ・フリー・ワールド(ニール・ヤング、1989)
4)ユアー・ザ・デヴル・イン・ディスガイズ(エルヴィス・プレスリー、1963)
5)イン・ジ・エア・トゥナイト(フィル・コリンズ、1981)
6)ナイツ・イン・ワイト・サテン(ムーディ・ブルース、1967)
7)フー・ドゥ・ユー・ラヴ(ボ・ディドリー、1956)
8)テイク・ワット・ユー・ウォント(ポスト・マローン feat. オジー・オズボーン&トラヴィス・スコット、2019)
9)ランブリン・マン(オールマン・ブラザーズ・バンド、1973)
10)ベル・ボトム・ブルーズ(デレク&ザ・ドミノス、1970)
11)クロコダイル・ロック(エルトン・ジョン、1972)

二人とも30歳前後っていうラーキン・ポーの世代からしたら、だいたいどれもリアルタイムでは知らなかったはずのもの。ポスト・マローンの8曲目は2019年だからもちろん聴いていたでしょうけど、あとはかろうじて1998年のレニー・クラヴィッツだけくらいじゃないですか。

ストレート・カヴァーもあれば大きく換骨奪胎しているものもあり、さまざまですが、一貫しているのは古典ロックへの敬意の念がしっかり刻印されているということですね。いかにもラーキン・ポーらしいところで、前作だってクラシカルなブルーズ・ロックのスタイルそのまんまだっわけですが、今作ではそんなクラシックスの数々をカヴァーして、この二名の音楽志向をストレートに表明しています。

例外もあるものの、どの曲もバンド形式ではなく、ベースもドラムスも入らない姉妹二人だけでの演奏。レベッカがアクースティック・ギター、ミーガンがラップ・スティール・ギターっていう、たったそれだけ+ヴォーカルで構成されている、シンプルなサウンドで、コロナ禍ゆえに、かえってそれでこの二人のブルーズ・ルーツ志向が鮮明になっていますから、結果的にはオーケーですよね。

そんなシンプルな、二人だけでの演唱が、よそいきじゃないアット・ホームな親近感に満ちた部屋着のままのブルーズ・ロックをかもしだしてくれているのがうれしいところ。もちろんYouTubeでどんどん公開している日常的なセッションの模様そのままにアルバムにしたからってことです。飾らない地味でシブくインティミットな感触が、クラシック・ロックの本質的一面をみせてくれています。特に今回はミーガンのブルージーなスティール・ギターが味わい深くていいですね。

後追いで聴きまくり掘り下げたんだなあってことがよく伝わってくる内容で、2020年代にこうした1960〜70年代中心のクラシック・ロック・ナンバーをそのまま再現するというのがいまさらなのかどうかわかりませんが、ぼくら初老おじさんファンの嗜好にそのままピッタリ合っているこのラーキン・ポーのカヴァー集、素直に歓迎です。

(written 2021.1.15)

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