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さわやかに一体化した声とギター 〜 メリー・ムルーア&オラシオ・ブルゴス

(4 min read)

Mery Murua y Horacio Burgos / Roble 10 Años

ジャケ聴きです。これはワイン・ボトルのラベルですよね。アルコール類をいっさい受け付けない体質の下戸なぼくですけど、こういったワイン・ボトルの写真を、実物でも、見るだけなら好きです。で、どんな音楽かな?と興味がわいて、ちょっと聴いてみたんですね。

主役のメリー・ムルーアはコルドバ(アルゼンチン)の歌手。伴奏をつとめてきたギターリスト、オラシオ・ブルゴスとのタッグが10周年を迎えたということで、それを記念して、ワインの10年ものみたいな感じのジャケット・デザインとアルバム題でリリースされたのが、この『Roble 10 Años』(2017)なんでしょうね。

メリー・ムルーアとオラシオ・ブルゴスのコンビ10周年記念アルバムということだからなのか関係ないのか、今回のこの『Roble 10 Años』、全編ギターとヴォーカルの完全デュオで構成されています。ほかの楽器などはいっさいなしの、ふたりだけ。いままでもそれに近いサウンドのアルバムを出してきていたようですが、今回は徹底しています。

メリーもオラシオも、アルゼンチンのいわゆるフォルクローレの音楽家とされているらしく、といってもその世界のことをなにひとつ知らないぼくは、アルバム『Roble 10 Años』を聴いても音楽ジャンルのことなどピンときませんし、収録曲も一個も知りません。でも、このサウンドと歌のこのまろやかな清涼感がとても気に入ったんですね。

クールな感触もあって、ちょっとキューバやメキシコのフィーリンを思わせる音楽だなと感じます。むろんフィーリンとはぜんぜん違うわけですけど、ちょうどホセ・アントニオ・メンデスがギター弾き語りで自分のレパートリーを歌っている、ああいった世界と共通する感触を、このメリーとオラシオのデュオ・アルバムにも感じます。

それをあえて言語化すれば、「洗練」ということになるんじゃないでしょうか。特にオラシオのギター・ワークに強いそれを感じるんですけど、メリーのヴォーカルだってすんなり素直に、こねくらず、スーッとストレートに発声していますから、一種のフィーリンっぽいソフィスティケイションをぼくが感じるのも当然かなと思います。

しかもこの二名のギター&ヴォーカルのデュオ、上で示唆しましたように、まるでひとりでの弾き語りであるかのように聴こえます。二名で役割分担しているにもかかわらず、一体化していて、たぶん10年いっしょに活動しているというキャリアのなせるわざなのか、こ〜りゃすばらしいですね。メリーはすっと歌っているだけかもしれませんが、オラシオの伴奏がうまいんでしょうね。そんなところもポイント高しです。

もう九月に入りましたが、こちら愛媛県松山市ではまだまだ真夏の猛暑が続いていて、予報では今夜〜明朝の最低気温がなんと30度となっています。こんなの、熱帯夜じゃなくて、なんと呼んだらいいのか?そんな日でもこの『Roble 10 Años』を聴けば、ちょっとしたさわやか感を味わえて、本当に心地いいですね。

(written 2020.9.2)


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