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ボッサ・ポップスとはなにか?それは=アストラッド・ジルベルトのことだった

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Astrud Gilberto’s 6 Essential Songs

主に英語で歌うときのフィーメイル・ボッサ・ポップスのイコン・ヴォイスだったアストラッド・ジルベルトが亡くなりました。「イパネマの娘」(1964)があんな世界的大ヒットにならなかったら、その後のワールド・ポップスはかなり様子の違うものとなっていたはずです。

アストラッドがいなかったら、21世紀のいまをときめくレイヴェイだって、ジャネット・エヴラだって、あるいは(伊藤ゴロー時代の)原田知世だって、存在していなかったんです。そもそもボッサ・ポップスという世界を産んだのがアストラッドですから。

それくらいアストラッドが世界のポップス・シーンに果たした功績は大きかった。現在はレトロ・ブームで、1950〜60年代的USアメリカン・ポップスを、それも若手や新人がどんどんやるようになっていますから、アストラッドの位置や重要性にふたたび脚光があたるようになっていたかもっていうところへの訃報だったんだと思います。

じっさいレイヴェイなんかはソーシャルではっきり追悼の投稿をしていましたし、いまボッサ・テイストなジャジー・レトロ・ポップスをやっている歌手たちは、だれもがみんなアストラッドに背中向けられないというのは間違いありません。アストラッドがボッサ・ポップスを定義したんですから。

ヴィブラートなしコブシなしでナイーヴかつストレートに発声し、ややフラット気味に低域から高域まで均質に歌え、デリケートで、キンと立つこともない(無表情とも思えるほど)おだやかなアストッドのヴォーカルは、まさしく2010年代以後的なサロンふう軽いグローバル・ポップスの潮流そのもの。先駆けなんていうのもおこがましい、いまぼくらがふだん聴いているのは=アストラッドなのです。

(written 2023..6.8)

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