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時代がひとめぐりしての2022年型フォーク・ブルーズ 〜 タジ・マハール&ライ・クーダー

(3 min read)

Taj Mahal & Ry Cooder / Get on Board: The Songs of Sonny Terry & Brownie McGhee

タジ・マハール&ライ・クーダーの新作『ゲット・オン・ボード:ザ・ソングズ・オヴ・サニー・テリー&ブラウニー・マギー』(2022)は大きな注目を集めていて、各所で賞賛のことばが書かれまくっていますから、ぼくなんかは黙って楽しんでいればいいような気もします。なんの説明も必要ありませんし。

でもみんながあまり言わないことを一個強調しておきたくて。それはこの音楽が端的に<ブルーズの復権>を謳ったものだってこと。そうかといって音楽家たちになんのハッタリも気負いもなく、すんなりナチュラルにホーム・セッションをこなしているのがベテランらしいところ。

題材になっているサニー&ブラウニーのパフォーマンスというのは、1960年代には公民権運動の讃歌としても機能していました。だから2022年にそれをとりあげる重要性もそこにあるとぼくは思うんですね。BLMムーヴメントやロシアのウクライナ侵略など60年代と変わらず揺れまくりのこの時代、サニー&ブラウニーの曲が息を吹き返す意義は大きいです。

タジとライは、しかし(キャリアと年齢ゆえか)特に気張らず欲もなくメッセージを示すこともなく、ただ淡々とワキームの自宅で三日間のライヴなホーム・セッションを重ねただけ。それにあとから音をくわえたり細かな修正をし、つくりこんで完成品にもっていったんですね。

そんな事情があるもんですから、アルバムの音響はかなりラフで、スタジオではない空間性を感じさせるもの。そこがまたナマな質感で、ブルーズ・ミュージックのイキイキとした再現模様を演出していて、いいじゃないですか。そう、21世紀以後、ブルーズはもう死んだ、終わった、老人の音楽だ、現代的訴求性なんかない、とさんざんな扱いですが、そんなことないんですよね。

それをタジとライはヴィヴィッドに示してくれたような気がします。時代が一巡りも二巡りもして、過去の遺産みたいになっていた音楽がかえっていま「新しい」と脚光をあびたりするようになっていますが、ブルーズが時代の流行音楽だった60年代当時から現役の二人が、レトロな視点というよりむしろ不変の意味を持つものとして、サニー&ブラウニーのレパートリーを甦らせているのはうれしいです。

まるで「自分たちが駆け出しだったころに憧れていたひとたちのようにいまはなった」と言わんばかりに、自分たちはここにいるよ、めぐりめぐってここへ戻ってきたと、しかもそれを自然体で気楽に演奏している姿がアルバムのサウンドに聴きとれて、なんだか頼もしく胸がときめきます。

(written 2022.4.27)

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