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世界のポピュラー音楽が、濃厚な表現を避け、近年こうしたあっさり淡白系へ傾いているというのは言を俟たないところ 〜 マルシア

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Márcia / Vai e Vem

マルシアという名前は日本でネット検索するにはちょっとやっかいで、ブラジル人やポルトガル人のMarciaで検索しても、カタカナのマルシアでも、猪俣公章門下だった例の演歌歌手マルシアの情報ばかり大量に並んでしまい、ちょっとね。そもそもありふれた名前ではあります。

きょう話題にするのは1982年リスボン生まれポルトガル人歌手のマルシア。その最新2018年作『Vai e Vem』がなかなかいいと(ぼくは)思うんですよね。基本自然体、フォーキーで、リキまず飾らず、さり気ないおしゃべりのようにも、ひとりごとのようにも歌うスタイルがですね、ぼく好みです。

個人的に好きなアントニオ・ザンブージョによく似ていて、マルシアも声を張らず伸ばさず、下向いてぼそっとつぶやくようなささやき系ヴォーカルなんですね。そして、このアルバムには実際ザンブージョが一曲ゲスト参加しています。

ザンブージョだけでなく、サムエル・ウリアが一曲、サルヴァドール・ソブラルも一曲づつゲスト参加していて、だから同じポルトガルで近年人気の若手新感覚派男性歌手を招いてのマルシア自身もそうである新世代的あっさりヴォーカルを聴かせた、ちょっとフィーリンっぽいようなボサ・ノーヴァっぽいような、そんなファド・ミュージックだと言えましょう。

こんなのはどこもファドじゃないよ、気持ち悪いだけ、っていうのはザンブージョあたりにもずいぶん向けられてきた悪口だと思うんですが、このマルシアもまったく同系統の新感覚派ファド新世代なんですね。世界のポピュラー音楽が、濃厚な表現を避けるようになり、近年こうしたあっさり淡白系へ傾いていることは言を俟たないところでしょう。

聴き手によって好みはさまざまなので、他人がどう言おうと関係ありません。ぼくはこういう音楽が好きなので聴くだけ。

(written 2022.3.21)

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