ネオ・ソウルに混じるおしゃれカルカベ 〜 ゾーズ・シャンハイ
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Zoe’s Shanghai / Lava Love
ゾーズ・シャンハイはバルセロナ出身のバンドで、現在はパリが拠点。やっているのはジャジーなネオ・ソウル。最新作『Lava Love』(2021)で知りましたが、ぜんぶの曲が英語詞なんで、パッと聴き最初アメリカかイギリスのバンドかな?とぼんやり感じていました。
なぜ上海なのかは調べてもわからず。中心人物はヴォーカル&ギター担当のゾー・レニー(Zoé Renié)。これにベースのアレックス・モラス(Alex Molas)、キーボードのトマス・フォッシュ(Tomàs Fosch)、ドラムスのアウレリアン・ランディ(Aurélien Landy)が参加した4ピース・バンドです。
アルバムの音楽性にバルセロナとかパリとかヨーロッパふうな印象もほぼなくて、アメリカ発の世界で普遍的なネオ・ソウルをやっているなと思います。なんでもジャイルズ・ピータースンも注目しているバンドだそう。あるいはひょっとしてそっち方面で今後ブレイクしたりする可能性もある?ってことはやっぱり欧州発信?
聴いて心地よくリラックスできる音楽ですが、胸にひっかかるとか特にどうとかってこともないような漂うアンビエンスなのは、やはりコンテンポラリーな音楽らしいなめらかさ。アメリカやイギリスの現代R&Bなんかにも共通する特性で、実をいうとこの手のコンテンポラリー・ミュージックはいまいちピンとこない部分もあって、やっぱりレトロ志向なほうが好みだなあと感じます。
それでも一曲だけ妙に耳に残るおもしろいサウンド・メイクをしていたものがあります。4曲目「7min」。最初ふわ〜っとしたキーボード・シンセサイザーの音が幕か空気のように降りてくるんですが、数秒でなんとそこにカルカベ(鉄製カスタネット)の打音がミックスされはじめます。
ゾーの歌が出てしばらく経つとそのカルカベは消えるんですけども、アウトロ部分で再度挿入されて、そこにヴォーカルも重なります。やはりヴェールのようなシンセ・サウンドが垂れ込めて、カルカベを香らせながらそのままフェイド・アウトして曲が終わるっていう。
べつにグナーワとか北アフリカ音楽っぽさなんかなくて、たんなる軽いスパイスというかアクセント、装身具としてちょっと着けてみただけのこと。いまやこういったネオ・ソウル・ミュージックでは、カルカベのかしゃかしゃっていうあのサウンドが一種のおしゃれアクセサリーになりうるんだなあ。モロッコの儀式現場での泥くさ〜い響きとはおよそかけ離れた世界ですけど、あの音が好きなぼくは微香でもニンマリ。
(written 2022.5.2)
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