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快感!肉体派大西順子 〜『Grand Voyage』

(3 min read)

大西順子 / Grand Voyage

ごめんなさいジャズ・ピアニストの大西順子をいままでちゃんと聴いてこなかったですが、Astralさんのご紹介で耳にしてみてビックリ仰天、こりゃすごい!と感激しきりですっかり夢中。

それが最新作『Grand Voyage』(2021)。がつんがつんと弾き倒していて、もうのけぞったまま口あんぐりですよ。まさにゴツゴツの肉体派。全速力で血しぶきが飛び散りまくるような音楽です。

ほぼどの曲もレギュラー・トリオ(b井上陽介、ds吉良創太=すごい)+大儀見元のパーカッションという四人編成。打楽器陣の強化がグルーヴに色彩感と濃厚さをもたらしていて大成功。ど迫力でぐいぐいドライヴするさまは痛快のひとことに尽きます。もう1曲目「Wind Rose」からいきなりトップ・ギアに入れてエンジン全開で爆走するさまは、前戯なしでの激しいセックスみたい。

パーカッショニストの参加でアフロ・ラテンなノリが鮮明に出ているのは3曲目「Printmakers」(ジェリ・アレン)。出だしからいきなりバンドが全速力ですが、ポリリズムの多彩で自在な変化模様は圧巻。デューク・エリントン直系といえる順子の分厚い鍵盤さばきにも息を呑みます。バンドと一体になっての曲後半部での高揚感なんか、とんでもないすさまじさ。

そのまま打楽器アンサンブルだけで演奏されている4「Tridacna Talk」を経て、ふたたびのハード・グルーヴ・ナンバーである5「Ground Swell」へ。これはアフロ・ラテンではなく超高速4ビート。しかし決して従来型のメインストリーム・ジャズではない多彩な現代的ビート感が表現されています。ここでも順子のブロック・コード叩きが超快感!

と思ったら次の6「Harvest! Harvest!」がこりゃまた(途中からだけど)強力でカラフルなラテン・ハード・グルーヴを聴かせて魅了されるし、なんなのこのアルバム?!もうここまでの展開で完璧に腰が抜けてしまいます。傑作でしょう。

小野リサが参加しての静かなボサ・ノーヴァ・ナンバーを息抜きに、閑話休題、後半もあざやかですよ。9「Charlie The Wizard」とか、そして、アルバム中これがいちばんぶっ飛んでいるんじゃないかと思う11「Low Tide」。前からもともとハードでノリまくりの濃厚ジャズ・ピアノで定評があったらしいですが、順子は、それにしてもこれなんか聴きながらスピーカーの前にすわったままの姿勢で3メーターくらい飛びました。

アルバム・ラスト14曲目「Kippy」はどう聴いてもセロニアス・モンクの曲だよなあ、もろそのスタイルだ、と思ったらダラー・ブランドが書いたもの。でもこのメロディ・ラインの動きかたはモンクのそれ。奇しくも順子がデューク〜モンク〜山下洋輔という垂直系ピアニストの系譜に連なることを証明しています。

(written 2022.4.28)

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