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エディ・コンドンが二位だなんて

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奇跡が起きました。8月6日付の「このブログの人気記事ランキング」で、エディ・コンドンの記事がなんと二位に入りました!こんなことってあるのでしょうか。上掲リンクがその記事ですけど、エディ・コンドンですよエディ・コンドン。ディキシーランド・ジャズですよ。それが人気ランキング二位だなんて。

ぼくが1979年にジャズに夢中になりはじめたとき、すでにニュー・オーリンズ・ジャズ、ディキシーランド・ジャズ・スウィング・ジャズといった古典的なスタイルを好んで聴くというファンは皆無となりつつありました。周囲に(ごくごく少数の例外を除いて)まったくいなかったんじゃないですかね。その傾向がどんどん進み、現在に至るというわけです。

ぼくだってジャズを聴きはじめたいちばん最初はモダン・ジャズ(とフュージョン系)ばかりでしたからねえ。リアルタイム的に思い入れがあったのはもちろんフュージョンですけれど、レコードを聴く回数はハード・バップ、特にファンキー・ジャズなんかのほうが多かったと思います。ジャズ喫茶でメインでしたし、雑誌などジャズ・ジャーナリズムでもそれ中心でしたからね。

ぼくが第二次大戦前の古典ジャズにはまるようになったのは、ひとえに松山にたった一軒だけあったアーリー・ジャズばかりかけるジャズ喫茶「ケリー」(その後一回閉店して、「マーヴィー」として別の場所で再開も、また閉じる)のおかげです。マスターだった荒井さんの趣味だけで成り立っていたお店でしたけど、そこはアーリー・ジャズのレコードしかかけなかったんですよね。

どうしてケリーに足を踏み入れたのかは、たぶんなにかの間違いだったんでしょう。1980年初頭ごろ、ぼくはジャズ(と映画と推理小説)好きの大学生で、自転車で市内をブラブラしていて、「ジャズ」の看板が出ていたから気になって、それだけでたぶんケリーに入ってみたんでしょうね。そうしたらそこは異空間でした。

ケリーの荒井さんはモダン・ジャズのレコードもたくさん持っているし、渡辺貞夫さんなんかのフュージョンなんかも聴いていると知ったのはずいぶんあとになって個人的に親しくなってからで、最初は、うん、店内でも頑固オヤジといったイメージじゃなくほがらかでにこやかでしたけど(ぼくよりひとまわり年上なだけだった)、ケリーで聴けるジャズは戦前の古典ものばかりでした。それがどうしてだかぼくの琴線に触れたんですよね。

だから、ぼくのなかにもなにか古典ジャズ向きの資質があったということかもしれませんし、あるいはまんまと荒井さんの策略にしてやられただけだったのかもですけど、とにかく古典ジャズばかりかけるケリーに入りびたるようになり、それでもほかの(モダン・ジャズをかける)ジャズ喫茶にだってそこそこ行っていたんですけど。とにかく古典ジャズのトリコとなって、マスターの荒井さんとも親しくお話するようになりました。

荒井さんのご自宅にも頻繁に遊びに行くようになって、いっしょに街を歩いてレコード屋あさりをしたりなど、それはお店を完全にやめてしまってからのことですけど、ご自宅にあるレコードを聴きながらしゃべり、ぼくは知らないこと、わからないことを質問してはどのレコードを買ったらいいのか相談したりするようになりました。東京の大学院に進学するとなったときは、餞別として好きなレコードを棚から抜いて持っていっていいよと言われました。

あとはですね、1980年ごろというと、古典ジャズもたくさん紹介されている粟村政昭さんの『ジャズ・レコード・ブック』なんかが本屋で新刊で買えましたし、古いジャズもどんどん解説している油井正一さんの複数の著書だって並んでいました。それからあの『スイングジャーナル』だって、別冊ムック本みたいな特集号で古典ジャズをふくめた名盤選をやったりすることだってあったんですよ。たぶんその最後の時代くらいでしたよね。デューク・エリントン楽団の『アット・ファーゴ 1940』はそんな特集号で知りました。

こないだも記事を書いたエディ・コンドンの『ジャム・セッション・コースト・トゥ・コースト』もそんな時代に、大学生時分に、松山のレコード・ショップで見つけて買って愛聴するようになった一枚だったんですね。それ以来大好きなアルバムで、40年ほどが経過したいまでも大好きなままずっときているっていう、そういうことなんですね。

でも周囲を見わたし世間の空気を感じてみれば、ディキシーランド・ジャズなんかを愛好する人間は、日本では絶無に近いというような状態で(ディズニーランドで聴けるだけ?)、ディキシーだけじゃなくニュー・オーリンズもスウィングも好きなぼくとしては、いくら好きでも仲間がぜんぜんいないなあと思って、いささかさびしい思いに暮れたりすることもある41年間なんですね。

だからごくたまにこうやって、いっときとはいえブログのアクセス人気記事のランキング上位にそれが入ったりすれば、本当に飛び上がるほどうれしいんです。

(written 2020.8.6)

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