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「ルビー」は最高の現代シティ・ポップ・チューン 〜 エマリーン

(2 min read)

Emmaline / All My Sweetest Dreams

萩原健太さんのご紹介で知ったエマリーンという歌手(USアメリカ)。レトロ・ジャズ路線もいいですが、ドナルド・フェイゲン(スティーリー・ダン)っぽい70sふうシティ・ポップみたいなのを歌っているときがさらにいっそう魅力的だとぼくは感じました。顕著なのがデビュー作『All My Sweetest Dreams』(2019)。

このEPにはまだレトロ・ジャジーな方向はなく、ヴァイオリンも弾いておらず、ひたすらシティ・ポップばかり歌っていて、曲はすべてエマリーンのオリジナル。といってもどのへんを意識したかあきらかで、過去に隆盛だったさわやかシティ・ポップ、AOR系を完璧に模しているんですね。

2020年代的同時代性はないからその意味ではやっぱりレトロ指向ではありましょうが、ジャズよりこういった(ロック系)シティ・ポップ路線のエマリーンこそ、ヴォーカルもいいけどソングライティングが、最高にいまのぼく好み。むろんそれはジャジーな要素と切り離せないものです。

特にグッとくるのは3「Shy」と6「Ruby」。気持ちいいぃ〜。2「All My Sweetest Dreams」もいいな。さわやかクールで都会的。チリひとつ落ちていない感じでひたすら洗練されていて、土と泥にまみれたような部分なんかこれっぽっちもありません。それがぼくの嗜好でもあります。

なかでも「ルビー」はきときわチャーミングで最高。流れてきた瞬間に一耳惚れしちゃったような快適さで、だぁ〜いすき!なんの変哲もないシティ・ポップ・チューンのようではありますが、2023年にこんな曲なかなか聴けるもんじゃありません。

AORっていうかつまり西海岸フュージョン+ヴォーカル入りのようでもあり、コンピューター打ち込みを排したオーガニックな演奏音楽であるのもすばらしいと思います。音楽一家で育ったエマリーンは、ですから幼いころからこうしたものを身につけられる環境にあったんでしょうね。

この後現在までにある二つのEP(2023.4.22時点)はややレトロ・ジャズ寄りで、レイヴェイあたりにも通底しつつ違う個性も感じます。

(written 2023.4.22)

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