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貞夫ワールドの真骨頂 〜『渡辺貞夫 meets 新日本フィルハーモニー交響楽団』

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渡辺貞夫 / meets 新日本フィルハーモニー交響楽団

渡辺貞夫90歳の最新作は『渡辺貞夫 meets 新日本フィルハーモニー交響楽団』(2023)で、文字どおり新日フィルとのライヴ共演。今年4月29日にすみだトリフォニー・ホールで録音されたものです。こ〜れがすばらしいできばえですよ。両者の共演は30年以上ぶり。

曲はすべて貞夫さんのオリジナル・ナンバー。それをバンドが支え、さらにアレンジをだれがやったのか見事なオーケストラ・サウンドがいろどりを添えています、っていうよりがっぷり四つに組んだような演奏ぶり。90歳でここまでできるんだ!と思うとうれしくなります。

ジャズというよりフュージョン系の曲ばかりで、それを生演奏オケとの共演でライヴ演奏するというのは、実をいうと『How’s Everything』(1980)以来の貞夫さんのお得意パターン。サウンドがゴージャスになるのはフュージョン・ミュージックの特質とそもそも相性がいいと思います。

今作でもネオ・クラシカルなサウンド寄りでフュージョンの2020年代的コンテンポラリーネスを聴かせているし、それに乗ってアルト・サックスに専念の貞夫さんは快調に歌うように吹くしで、もはや文句なしの内容です。

個人的に特にグッとくるのは哀切系のバラード・ナンバー。3「つま恋」、5「オンリー・イン・マイ・マインド」、7「レクイエム・フォー・ラヴ」の三曲。4「ボア・ノイチ」をふくめてもいいかな。貞夫サウダージとでもいうような独自の哀感がたまりません。

なかでも7「レクイエム・フォー・ラヴ」があまりにもすばらしい。オーケストラのサウンドもきれいだし(ほんとアレンジャーだれ?)、こういう涙腺を刺激するような切ないバラードは「コール・ミー」(『オレンジ・エクスプレス』)以来貞夫ワールドの真骨頂ですね。

(written 2023.10.29)

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