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ジョー・ダイスンのスピリチュアリティ 〜『ルック・ウィズイン』

(3 min read)

Joe Dyson / Look Within

ジョー・ダイスンは米ニュー・オーリンズ出身の若手ジャズ・ドラマー。ドナルド・ハリスンのバンドで頭角を現してきた存在で、その後バークリー音楽大学に進んでいます。Dr. ロニー・スミスはじめ大物ミュージシャンともすでに共演していて、世界をまわっているみたいですよね。

『ルック・ウィズイン』(2021)は、そんなジョー・ダイスンの自己名義ではデビュー・アルバムとなるもので、基本、モダン・ジャズの伝統的なフォーマットとイディオムを使いながら、その境界線を拡大しようとする試みに聴こえます。

ジョーは二歳のときから牧師である父親の教会でドラムスを叩いていたそうで、実際、このアルバムでも二曲でその父のプリーチがサンプリングされ挿入されています(2、9)。またアルバム・タイトル・ナンバー6曲目で歌っているL.E.とは、ジョーの妹ジョエル・ダイスンのこと。ジョエルもまた幼少時から父の教会で歌っていたそうですよ。

こうした教会体験がジョーの音楽に与えた影響は甚大のよう。今回のアルバムでもスピリチュアルな側面が目立つのはそうした要素のためでしょう。そのおかげでちょっと1960年代ジャズに通じる雰囲気も感じないではなく。

だからこの『ルック・ウィズイン』ではスピリチュアリティがメインのテーマとなっていると言っていいし、ジャズのサウンドでその探求というか冒険を表現したものだとみることができますね。

形式的な部分では従来的なメインストリーム・ジャズの範疇にありながら、深部ではゴスペル、アフロ・ニュー・オーリンズなリズムがはっきりと刻印されています。甘美なサウンドスケープを実現しているのもそのためですね。

そもそも従来的なジャズだってそれらを体内に込めてずっと進んできたもの。ジョー・ダイスンは、いまの時代にそれを解放せんと、ジャズの伝統的な演奏手法を用いてもそれらは表現できるのだということを示そうと、しているんじゃないかなというのが、このデビュー・アルバム『ルック・ウィズイン』を聴いての率直な感想です。

(written 2021.7.25)


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