サブスク世代のレトロ・ブルーズ 〜 エディ 9V
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Eddie 9V / Little Black Flies
なかなかに痛快でちょっとオタクっぽくて好感が持てる白人ブルーズ・ギターリスト&シンガーのエディ 9V(ナイン・ヴォルト)。9ボルト電池ってことだと思うので、だからエレキ・ギター小僧と名乗っているんでしょう。
本名はメイスン・ブルックス・ケリー。ジョージア州アトランタ出身で、なんでも15歳のころに学校へ行くことも仕事に就くことも拒否して、地元のブルーズ・クラブ・サーキットへの参加を表明。ちょっとオールド・ファッションドな生きかたかもねえ。
2019年にデビュー・アルバムをリリースし、きょう話題にする本作『リトル・ブラック・フライズ』は、フル・アルバムとして三作目にあたるものみたいです。2021年5月リリースだったこれでぼくはエディに出会いました。
ちょっぴりロー・ファイなサウンドにわざと加工して1950年代シカゴ・ブルーズみたいに聴こえるようにしてあるこのアルバム、収録曲はアルバート・キング(11)とかジミー・リード(12)などのカヴァーを除き、エディとプロデューサー、レイン・ケリーとの共作オリジナル。
バンド(エディのほか、たぶんサイド・ギター、ハーモニカ、オルガン、ベース、ドラムス)でスタジオ入りしてのほぼライヴ一発録りだったそう。そんな生のブルーズ・フィールがこのアルバムにはあふれていて、バンドでのエレキ・ブルーズを聴き慣れた、それも往年のシカゴ・ブルーズ系が好きな人間には、たまらないレトロ感。
ボビー・マーチャンふうあり、ジェイムズ・カーふうあり、マディ・ウォーターズふうあり、エルモア・ジェイムズふうありで、エディ自身このへんのグッド・オールド・ブルーズの世界にすっかり魅せられて、ずぶずぶにはまり込んでいるんだなあというのがよくわかります。
レトロ・ブームがある、ここ数年くらいか?かつての古い(ジャジーな)ポップスがリバイバルする動きがたしかな流れとして確立されつつある、それも新世代が取り組んでいるというのは間違いないコンテンポラリー・ムーヴメントだと言えますし、21世紀の音楽としてはまったく現代的訴求感のないブルーズの世界なんかでも似たような現象があるのかもしれません。
こういったレトロ・ブームの背景として、おそらく配信、それもサブスクで過去音源にだれでも自由かつ安価でどんどんアクセスできるようになったということがあるんじゃないかとぼくは考えています。
1990年代にも戦前ブルーズやクラシック・ロックなどのリバイバル・ブームがありましたが、あのころはちょうど当時の新メディアだったCDで、古い(SPやLPなどの)音源が立て続けにリイシューされ、それで当時の若年世代も過去の音楽になじんでいた時期でした。
エディ 9Vは現在24歳ですから、ぴったりサブスク世代というわけで、たぶんそういうことかと。
(written 2021.12.12)
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