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ジャジーに洗練されたBGM 〜 リンジー・ウェブスター

(3 min read)

Lindsey Webster / You Change

以前一度書いたお気に入りスムース・ジャズ歌手、リンジー・ウェブスターの新作が出たっ!...といって喜んで聴いていたところ、その『You Change』はどうやら新作ではなくて2015年にリリースされていたもののよう。な〜んだ。

Spotifyの新着案内プレイリストで流れてきて、アプリ内で見てみたら2023と記載されているしですっかり信用していましたが勘違いだったみたい。それはそれでいいとして、気に入ったのでやっぱりちょっと手短に書いておこうかな。

リンジーの音楽はスムース・ジャズ・チャートの常連ですが、コンテンポラリーR&Bとクロスする領域での現代ジャズ・ヴォーカルなわけです。『ユー・チェインジ』も同じ。AOR的でもあって、だからむかしならフュージョンとされたようなもの。

ソフトでメロウで、都会的に洗練されていて、土と泥にまみれた田舎の農村あぜ道感なんて1ミリもないっていう。いまのぼくは愛媛県松山市森松町っていう、つまり周囲にたんぼと畑しかないような場所に住んでいますけど、そんなあぜ道をお散歩しながらBGMでリンジーのこういうのとか聴いているんです。摩天楼なんかと縁もゆかりもない田舎町で。

そいでもって緑と花と小川と小鳥と蝶に囲まれつつ都会の音楽を聴き、いい雰囲気にひたって妄想するのが日常なんですね。リンジーは2020年ごろまでずっとキース・スラタリー(キーボード)と私生活をともにし、音楽的にもパートナーシップを組んでいました。『ユー・チェインジ』もそんな時期の一作で、全曲二名の共同プロデュース。

私生活では別れちゃったみたいなのですが、音楽面ではビジネス・ライクな関係が継続していて、以前書いた『Reasons』(2022)もそうでした。この事実がリンジーの音楽をシティ・ポップなよそおいをまとったスムース・ジャズにしあげている最大の要因なんですね。

『ユー・チェインジ』全体としては、どうも人間関係でつらくかなしいことがあった女性を主人公としての物語をつむいでいるようなつくりで、曲調もマイナー・キーを主体にした悲哀感のこもるものが多くあります。

しっかりしたビートを効かせつつエモーションは抑制しながら淡々と、それでもクールな熱を込めてつづるリンジーのヴォーカルとジャジーに洗練されたバック・トラックは、しっかり正対して聴き込むというよりまさしくウォーキングなどのBGMとして極上。

このごろのぼくはそうした音楽がわりと好きなんです。流し聴きに最適なものが。

(written 2023.5.16)

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