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しんどいとき助けになる音楽(26)〜 スティーヴィ・ワンダー

(2 min read)

Stevie Wonder / Songs in the Key of Life

スティーヴィ・ワンダーの音楽ってちょっと不思議な肌あたりがあるっていうか、かなりキツい差別告発とか辛辣な社会風刺とかたっぷりふくまれているにもかかわらず、音楽の感触はふわりとやわらかく、しかもなんだかとってもあったかい感じがします。体温のぬくもりがしっかりあるっていうか。

そんなところもスティーヴィの音楽を愛してきた大きな理由なんですが、ぼくのなかでは特に『Songs in the Key of Life』(1976)に愛着が強いです。たぶんそれはこれがはじめて触れたスティーヴィだったからでしょうね。大学生のころ最初に買ったこの歌手のレコードでした。

二枚組+EPっていう変則的な大規模編成だったおかげで、聴いても聴いても飽きないし、時間のあるときにあちらこちらと存分に楽しめるアルバムだったことも大きな愛好理由です。一個のテーマにフォーカスしているより、ごちゃごちゃしていて、まるでおもちゃ箱をひっくり返したような雑多感がぼくは好きなんです。

いろんなタイプの曲があって、LPの四面はそれぞれそれなりに起伏があるように構成されていたと思いますが、それを思い起こしながらいまではサブスクで聴いているっていうのはぼくの世代ならではですよね。CDやサブスクではじめてこのアルバムを聴くリスナーはどう感じるでしょうか。

ともあれ、「文は人なり」っていう有名なことばがありますが、それにならえば音楽家のばあいは「音は人なり」であるなと、スティーヴィの音楽を聴いているといつも思います。キビシいシビアな内容を歌っていても、まなざしは決して冷徹じゃない、血の通ったヒューマンなあたたかみ、やわらかさにあふれているんです。そういう人柄なんだろうなっていうのが音によく出ています。

(written 2023.9.16)

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