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しんどいとき助けになる音楽(49)〜 ドルサフ・ハムダーニ

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Dorsaf Hamdani / chante Barbara & Fairouz

チュニジア出身フランス在住の歌手、ドルサフ・ハムダーニの『chante Barbara & Fairouz』(2014)のことを思い出すきっかけがありました。聴きかえしてみたらやっぱりとてもよくて、ぼくこれ大好きです。バルバラとフェイルーズのレパートリーをフランス語とアラビア語で交互に歌ったもの。

ときにギター一台だけとかウード一台だけみたいな必要最小限のシンプルな伴奏なのに不足感がまったくなくて、しっかり聴かせる充実の音楽になっているのは、曲がいいということもあるでしょうが、なによりドルサフの歌ぢからとでもいうようなものがとても強いからでしょう。

シャンソンとアラブ歌謡という水と油みたいな二つの世界を自在に行き来するヴォーカル技法はみごとのひとこと。音楽監督となっているダニエル・ミーユがアレンジをほどこしたと思いますが、なにもやっていないというスポンティニアスさが一貫しているのもすばらしい。

正直いってバルバラなんて本人の歌を聴いてみてもイマイチなんですが、このアルバムではほんとうにいいなあと思えてくるのがドルサフならではの表現力というもの。アラブ歌謡と交互にならぶことで、それまで気づかなかった相貌をみせているといえます。

ずっと以前、アルジェルア出身でやっぱりフランスで活動するHKがやったシャンソン集に触れ、そうだよシャンソンなんてそのままじゃおもしろくないけど、こんなふうにシャアビふうにやれば楽しいじゃん!と書いたことがありました。

ドルサフの本作も、シャンソンだってここまでセクシーな音楽になりうるという解釈をみせてくれた立派なお手本ですね。この作品以後10年近くドルサフはずっと沈黙しているようですけれども、元気に活動しているでしょうか。

(written 2023.10.30)

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