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ジャクスン・ブラウン『フォー・エヴリマン』では、デイヴィッド・リンドリーのスライドがいいね

(6 min read)

Jackson Browne / For Everyman

いままでの音楽リスナー人生でなぜだか縁がなかったジャクスン・ブラウン。好みじゃないとかなんだとかっていうんじゃなく、ほんとうに聴いてみるチャンスがなかっただけなんですよね。かじり読む情報によれば、たしかにぼくのストライク・ゾーンからはやや外れているみたいだという判断もありました。

そういった自分では決してレコードやCDを買わないであろうものも、ちょこっと気軽に聴いてみることができるっていうのがサブスクの大きなメリットですね。試し聴きした結果、これはいいぞ!好きだ、と思える結果に転じることがよくあるし、たいへんなめっけものじゃないですか。結果、音楽趣味がひろがります。

そう、どうしてだかちょこっと聴いてみようという気になったジャクスン・ブラウンのアルバム『フォー・エヴリマン』(1973)も好印象でしたよ。こんないいミュージシャンだったなんてねえ、もっと早くに聴いておけばよかったな〜。

でも、まったくの初耳というわけじゃなかったというのが正直なところ。実はこのアルバムから(イーグルズもやった)一曲「テイク・イット・イージー」だけ、なにかの日本編集のカントリー・ロック・コンピレイションに入っていたんですね。たしか萩原健太さんがかかわっていたんじゃなかったかと記憶しているCD。

1990年代だったと思いますが、それでその一曲だけ聴いてはいて、なかなかカッコいいなと感じていたんで、そのへんが今回それを収録しているオリジナル・アルバムを聴いてみようと思った数十年前の遠因だったのかも。

それくらい気になっていた「テイク・イット・イージー」が、アルバム『フォー・エヴリマン』でも1曲目。カッコいいかっ飛ばすロックンロール、ローリングなカントリー・ロックということですけど、爽快で快感ですよね。これこれ、こういったビートが効いていてスライド・ギターがぎゅわ〜んと入るような音楽はほんとうに好みなんですよ。

これがレコード時代はA面トップ。今回アルバムではじめて聴いてみてビックリしたのがB面トップだったらしい6曲目の「レッド・ネック・フレンド」。な〜んてカッチョエエんだ!「テイク・イット・イージー」とまったく同様のローリング・カントリー・ロックですが、こっちのほうがもっとかっ飛ばしているじゃん、なにこれ、こんなカッコイイ曲ってあるの!?

ビートも効いているし、なんたってデイヴィッド・リンドリーのエレキ・スライド・ギターがキレッキレ!こんなの聴いたことないですよ。イントロ〜歌のオブリ〜間奏〜アウトロと大活躍で、いやあ、すばらしい。ピアノも目立ってノリノリでロックンロールしていますけど、エルトン・ジョンらしいです。いやあ、「レッド・ネック・フレンド」、これこそぼくにとってのこのアルバムの白眉です。カッチョエエ〜〜!

こういった1970年代前半のカントリー・ロックとされるものは、ほぼ同時期のブルーズ・ロック系のものに比べたらやっぱりぼくの守備範囲は狭いというのが事実。曲によって好みの差が大きいんですよね。

ブルーズ・ロック系のものだとだいたいアルバム一枚丸ごと楽しめるけど、カントリー・ロックは好きじゃないものも混じっているという印象がいままではあって、それはやはり西海岸で活動してジャクスン・ブラウンとも縁が深い同時期のリンダ・ロンシュタットやイーグルズなんかでもそうでした。

実際、ジャクスンのこの『フォー・エヴリマン』でも、1曲目の「テイク・イット・イージー」や6「レッド・ネック・フレンド」はめっちゃ楽しいなと感じるのに、2曲目以後イマイチ感が残るような気がします。でも、ぼくも歳とってちょっとはカドが取れてきたというか、許容範囲がひろがったということか、まずまず楽しめるので。それに2曲目以後も、たとえばほぼ同時期のロス・アンジェルス時代のビリー・ジョエルに通じるフィーリングもあるなと感じます。

ジャクスン・ブラウンのソングライティングがいいっていうことなんでしょうね。特に5曲目の「ジーズ・デイズ」。これ、Spotifyのデスクトップ・アプリで再生回数を見ると、このアルバムのなかではぶっちぎり断然トップなので、一般的にはこれこそが代表曲とされているものなんでしょう。

実際、5「ジーズ・デイズ」はたいへんいい曲です。これを録音するだいぶ前、1960年代にすでにジャクスンは書いていたものらしく、ほかの歌手にとりあげられたりもして、彼の名刺代わりみたいな有名曲だったものらしいですね。これもぼくの大好きなビリー・ジョエルっぽい。

「ジーズ・デイズ」でもエレキ・スライド・ギターが大活躍ですが、やはりデイヴィッド・リンドリーのようです。絶品じゃないですか。ある意味ジャクスン・ブラウンのヴォーカルの部分よりもスライド・ギターこそが歌っている、物語を語っているなという印象です。

(written 2021.4.19)

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