枯淡のエリゼッチ 〜『アリ・アモローゾ』
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Elizeth Cardoso / Ary Amoroso
エリゼッチ・カルドーゾ(ブラジル)晩年のアルバム『Ary Amoroso』(1991)。90年に亡くなっていますから、死後翌年にリリースされたということでしょうか。90年リリースという情報もありますが。
これ、ぼくはどうして出会ったんでしたっけねえ、昨2021年にCDリイシューされたんだったか、そうだったならディスクユニオンのアカウントがツイートしてくれたので気がついたんでしょうね、きっと。
アルバム題どおりアリ・バローゾ曲集で、エリゼッチにとってはキャリアをとおしすっかり歌い慣れているものだったはず。実際かなりの有名曲もふくまれていますが、晩年にアルバム一作全編でバローゾの曲をとりあげようというのはどういう心境だったんでしょう。
死が近づいて自身の歌手人生をふりかえるようにバローゾを歌いなおそうということだったのか、なにもわかりませんが、このアルバム、とても枯れていて渋くて、なかなか味わい深いものなんですよね。最近こういった落ち着いた静かでおだやかな音楽が好きになってきました。
エリゼッッチといえば、サンバ、サンバ・カンソーンの歌手だったわけですが、このアルバムにサンバ色はさほど強くありません。むしろジャジーな感触すらあって、ラファエル・ラベーロ(七弦ギター)、ジルソン・ペランゼッタ(ピアノ)、マルコス・スザーノ(パーカッション)ら名手たちに支えられ、細やかにやりとりしながら、淡々とバローゾをつづっていく様子が胸に沁み入ります。
いうまでもなく声にはもう強さや張りがないんですが、こうして装飾をそぎ落とさざるをえなくなってストレートに歌う枯淡の境地は、音楽や曲の持つ本来の魅力をかえってむきだしにしてくれるようにも思えます。ある意味純度の高い歌唱であるのかもしれません。
(written 2022.1.3)