見出し画像

ハード・バップ、たまに聴いたらとてもいい(字余り)〜 ソニー・クラーク

(4 min read)

Sonny Clark / Sonny’s Crib

(オリジナル・アルバムは5曲目まで)

ハード・バップでジャズ&洋楽に開眼したせいなのか、なんだかいまでもたまに聴けば心地いいと感じちゃうソニー・クラークの、それもホーンズ入りコンボ編成アルバム。どれも大差ないですが、きょうは『ソニーズ・クリブ』(1957年録音58年発売)を聴いています。いや、たぶんこれがいちばん好きかも。

こういうのはぼくにとって一種のノルタルジアっていうか、なつかしく青春時代を思い出すよすが。つまり脳内で濾過され美化されていて、イヤなことはぜんぶ忘れ、楽しかったこと美しいことだけきれいに蒸留されているんですよね。音楽も。あのころのことも。

だからそういう気分のときに無性に聴きたいハード・バップは、大学生時代にハマっていたありきたりの典型であればあるほどよくて、ぼくにとってはそれがソニー・クラークのホーンズ入りアルバムだということ。実際『ソニーズ・クリブ』にしろ、どこからどう切り取っても王道ハード・バップどまんなかじゃないですか。

2020年代になってこんなハード・バップにもはやなんの現代的意味もなく、といってもいまだ歴史的名盤紹介のたぐいには載っている機会が多いと思いますが(本作が、というよりソニー・クラークのどれかが)、個人的には名作だから云々っていうんじゃなく、なんとなく当時のことをなつかしくふりかえり、あの薄暗くタバコの匂いが充満していたジャズ喫茶の風景を連想させる音楽なので、そんな大学生当時(1980〜84)の、ほんとノスタルジアだからたまに聴くだけ。

『ソニーズ・クリブ』というアルバムの音楽的中身や評価、感想を書いておく必要はないでしょう、きょうは。そんなことじゃなくて、ただなんとなくのムード音楽、イージー・リスニング、私的青春プレイバックBGMとして、たまに聴いてみたら気持ちいいよっていう、そういったことを思い出しただけですから。

あ、そうそう、ひとこと付言しておくと、ジャズにはまった一枚目であるモダン・ジャズ・カルテット(MJQ)の『ジャンゴ』といっしょに、トミー・フラナガン『オーヴァーシーズ』を買ったんですが(二、三枚買いがぼくのあたりまえだった)、聴いて即そのまま大好きになり、フラナガンこそぼくがいちばんはじめに好きになったジャズ・ピアニストだったんですが、二番目がソニー・クラーク。

フラナガンと違って個人的にソニーのピアノ・スタイルはそんな好みというほどじゃなかったです。くりかえしていますように複数ホーンズ入りのコンボ編成でやっているその風情がもうたまらず大好きでした。コンポーザー/アレンジャー/バンド・リーダーとしての才のほうにずっと長けていたミュージシャンだったなあというのは当時から感じていました。

かつては寡作だったフラナガンには『オーヴァーシーズ』一枚しかなく、ピアノ・トリオ作品が1950年代からもっとあればまた違った道があったかもしれません。その点ソニー・クラークにはコンボ・アルバムがそこそこありましたからね。

(written 2022.6.26)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?