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アン・ピープルズへのラヴ・レターふたたび 〜 ドン・ブライアント2020

(5 min read)

Don Bryant / You Make Me Feel

Astralさんのブログで知りました。

1960年代から活動しているサザン・ソウルのシンガー/ソングライター、ドン・ブライアント。2017年に48年ぶりという新作アルバム『ドント・ギヴ・アップ・オン・ラヴ』をリリースして、その内容も充実していたので、日本のソウル・ファンもビックリするやら感激しきりだったわけです。

そんなドン・ブライアントが、それに続き今2020年にも新作アルバムを届けてくれました。『ユー・メイク・ミー・フィール』(2020)。前作に引き続きファット・ポッサムからのリリースで、メンフィス・ソウル健在を強く印象づけてくれるものなんですね。いやあもう年齢とキャリアを考えたら奇跡みたいなもんですが、そのキャリアがこれまたきっちり作品の内実に反映されているので感心します。

ところでこのブライアントの『ユー・メイク・ミー・フィール』、ちょっと妙なこともあるんです。6月19日に発売になったみたいなんですが、Astralさんのご紹介でぼくはすぐSpotifyで検索、見つかったので聴いていました。ところがしばらく経ったらグレー・アウトしちゃって聴けなくなったんですよね。

どうやらそのとき、フィジカルも回収になっていたみたいで、それはひょっとしたらCOVID-19のせいだったかもしれないし違うかもなんですけど、とにかくCDは買えない、配信でも聴けないっていう状態がずっと続きました。CDは基本買わなくなっているぼくなんで、Spotifyでまた復活したらいいのになあと思っていたら、やはり最近ふたたび聴けるようになってホッとしています。

しかしですね、どうも解せないのはSpotifyだと “Don Bryant” で検索しても “You Make Me Feel” でも、その合体でも、このアルバム、まったく出てこないんです、いまだに。これはやっぱりちょっとヘンですよねえ。ぼくは発売直後に自作プレイリストに入れていたんで、そこからたぐっていつも聴いているんですよ。オカシイよなあ。

それはともかく、ドン・ブライアントのこの新作『ユー・メイク・ミー・フィール』、2017年の前作がパートナーであるアン・ピープルズに捧げたものだったわけで、夫婦愛がブライアント復活劇の背景にあったわけですけど、今回の新作も引き続きアン・ピープルズへのラヴ・レターとなっています。

それこそが(前作もそうだったけど)このブライアントの新作アルバム最大の聴きどころだと思うんですね。それは出だし1曲目「ユア・ラヴ・イズ・トゥ・ブレイム」を聴いただけでわかります。この歌、シャウト、歌詞もそうなんですけどサウンド、特にリズムやホーン・リフなど、力強くブライアントの歌う「愛」を下支えしています。生バンドの演奏だからこそ成し遂げうる空気感がここにはありますね。

2曲目「99 パウンズ」はアン・ピープルズが歌った曲だから、いっそうこのブライアントのパートナーに向けられた感情が極まっているのを感じとることができるでしょう。やはり古い曲である7曲目「アイル・ゴー・クレイジー」にしたって、この太いファンキー・グルーヴ表現は、50年間いっしょにい続けているアン・ピープルズへの愛をサウンド化したものなんですね。

4曲目「アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ」は1970年代にオーティス・クレイが歌った曲。今回の新作アルバムでいちばん注目されるのがこれじゃないでしょうか。クレイは来日公演でも歌い、録音されアルバムにもなりました。その冒頭にはリハーサル・ヴァージョンだって収録されている、日本のファンにとっては特別な曲です。

ブライアントの今回の新作アルバムに収録されているこの「アイ・ダイ・ア・リトル・イーチ・デイ」は、作者自身によるハイ・サウンド実現で、決定的なヴァージョンに仕上がったと言えるのではないでしょうか。続く5曲目「ドント・ターン・ユア・バック・オン・ミー」と来るこのへんの流れは、アルバムをなんかい聴いてもグッと胸に迫る迫真の表現ですね。

(written 2020.8.28)

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