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リアン・ラ・ハヴァスの極上ムード

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Lianne La Havas / Lianne La Havas

アルバムを聴き終える瞬間、なんともなくすっとお別れできるものと、後ろ髪を引かれる思いにかられるものとがあって、それはこっちのメンタル状態にもよるんですけど、後者だと思わずもう一回と、すぐそのままリピート再生しちゃったりします。リアン・ラ・ハヴァスの新作『リアン・ラ・ハヴァス』(2020)も後者。最初に聴いたときなかなかすんなり終われなかったアルバムなんです。

リアンはプリンスやスティーヴィ・ワンダーが称賛したということで、しかしぼくはついこないだまでその存在を知らず。この歌手との初邂逅になった2020年の新作『リアン・ラ・ハヴァス』はもう三作目になる、英国はロンドンの歌手だそうです。ギターを弾きながら歌うシンガー・ソングライターで、しかし音楽性としてはネオ・ソウル、オーガニック・ソウルの範疇内にあるとしていいでしょうね。

三作目にして自身の名を冠したセルフ・タイトルド・アルバムにしたということは、出来にそれだけ自信があったということなんでしょうか、よくわかりませんが、極上のサウンド・テクスチャーをみせているなというのは間違いないです。それからリアンは声がいいですよね。このちょっとくぐもったようなスモーキーな声、これがエモーショナルに聴こえ、フォーキーなネオ・ソウル的質感の音楽を表現するのにもってこいじゃないでしょうか。

アルバムのなかでは1曲目とラスト12曲目が同じ曲「ビタースウィート」(のヴァージョン違い)ですけど、これがもうなんともいえずすばらしいですね。キーボードとドラムスのユニゾンでダン、ダン、ダンと入ってくるあたりですでに引き込まれてしまいますが、リアンのヴォーカルが出たらもっといいです。ゆったりじっくりと情感をちょっとづつもりあげていくように、しかし淡々と、ときに声を強く張りながら、つづっていくリアンのヴォーカルには大きな共感をおぼえます。

アルバム収録曲は、実はそんなたくさんパターンがあるわけじゃなくて、基本、「ビタースウィート」の路線というか、似たようなソング・ライティングとサウンド・メイクなんですけど、雰囲気一発というか、たぶん夜に、なんとなくバックグラウンドで鳴らしていれば、一貫したムードをつくりあげてくれるアルバムで、一目惚れしちゃったジャケットのモノ・トーンのムードとあいまって、これ以上ないいい心地にひたれます。

それがあまりにも心地よかったから、最初に聴いたときアルバムが終わってもお別れできなかったんですよね。アルバム『リアン・ラ・ハヴァス』、推薦できます。

(written 2020.8.18)


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