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ブルー・ミッチェルのジャズ・ファンク時代 〜『バントゥー・ヴィレッジ』

(5 min read)

Blue Mitchell / Bantu Village

きのう書いたブルー・ノート公式プレイリスト『ブルー・グルーヴ』で、それまで知らなかったカッコいいファンキー・チューンがいくつも見つかりました。ぜんぶとりあげているとキリがないので、二、三個にしぼって、もとのアルバムまでたぐって聴いてみましたので、感想を記しておきます。

きょうはトランペット奏者ブルー・ミッチェルの『バントゥー・ヴィレッジ』(1969)。このアルバム題、そして曲題にもなっているわけですけど、そこからアフリカ志向なんじゃないかと想像すると、アテが外れます。特にどこといってアフロ要素は見当たりません。でもカッコいいジャズ・ファンクですよ。ブルー・ミッチェルがこれだけのアルバムを残していたなんてねえ。

そもそもぼくのなかでのブルー・ミッチェルはハード・バッパーで、ホレス・シルヴァーのクインテットとか、そのほか自己名義作でもそうでですし、ブルー・ノートに録音されたいろんなハード・バッパーのアルバムでセッション・トランペッターとして演奏しているのを聴いてきて、あまり上手くないそこそこのひとだなあという印象しか持っていませんでした。

2018年ごろからですよ、ブルー・ノート公式が編纂・公開する各種Spotifyプレイリストでブルー・ミッチェルのやるファンキー・チューンをちょこちょこ聴いてみて、エッ?と感じたというのが最初の正直な気持ち。このジャズ・トランペッター、こんなファンキー・チューンを演奏していたのか?!と、認識をあらたにし、長年の軽視を反省していたところでした。

そこへもってきて、きのうのプレイリスト『ブルー・グルーヴ』1曲目にブルー・ミッチェルの演奏する「ブルー・ダシキ」が来ていて、あまりのカッコよさにもうKO状態、ひもをたぐってアルバム『バントゥー・ヴィレッジ』にたどりついたんですね。いやあ、ほんと、ファンキーでクールなアルバムです。

『バントゥー・ヴィレッジ』ではモンク・ヒギンズがアレンジャーをやっていて、曲もほとんどすべて(ディー・アーヴィンと共作で)書いています。モンク・ヒギンズはピアノや鍵盤楽器を弾き、このアルバムの音楽のキー・パースンになっているんですね。管楽器がやや多めの人数参加、リズムはエレキ・ギター、エレベ、ドラムス、コンガ。これでグルーヴィな演奏をくりひろげています。

どの曲もエレクトリファイされていて、リズムは16ビート。完璧なジャズ・ファンクのノリ。このアルバムが録音・発売された1969年当時は多くのジャズ・ミュージシャンがジャンルの境界をまたいでいたころで、ロック、ファンク、ソウルなどとジャズとの合体を試みて、成果もあげていた時期でした。アメリカでは若者を中心とするヒッピー文化がメイン・カルチャーの下層から噴出し、世界を変えつつあった時代でしたね。

1950年代から活動するブルー・ミッチェルも、もともとは保守的なハード・バッパーだったかもしれないですけれども、1960年代末ごろからの時代の、音楽の、変化を感じとって、ファンキーでグルーヴィな方向性へと舵を切っていたということだったんでしょう。その際のパートナーがモンク・ヒギンズだったと。

『バントゥー・ヴィレッジ』はそんな時代の典型的なジャズ・ファンク・アルバムの一つで、どの収録曲もエッジが効いていてファンキー。1969年のレコードですから、さぞやのちのレア・グルーヴ界でもてはやされただろうと思います。実際、サンプリング・ネタとして使われることも多いようですよ。ラスト7曲目の「ブッシュ・ガール」(こういう曲題のつけかたは感心しないけど)だけはきれいなソウル・バラードです。

(written 2020.8.29)


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