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灼熱の炎天下で 〜 アル・ビラリ・スーダン

(3 min read)

Al Bilali Soudan / Tombouctou

bunboniさんに教わりました。

ジャケット・ワークがよく表しているように、これは真夏の灼熱下の音楽だなあという気もしますが、今年のとんでもない暑さのもとではどうしてもちょっと聴く気にならず、冷房のよく効いた部屋のなかにあってすらちょっと遠慮したいという気分だったので、いまごろ九月になってようやく書いています。マリのトゥアレグのグリオ・グループ、アル・ビラリ・スーダン(Al Bilali Soudan)の『Tombouctou』(2020)。

このファズの効いたエレキ・ギターみたいにビリビリいうサウンドが刺激的でたまりませんが、それがテハルダントという楽器。西アフリカで一般的にはンゴニとして知られているものですね。トゥアレグのタマシェク語ではテハルダントと呼ぶようです。だから生でそのまま弾かれることが多いんですが、アル・ビラリ・スーダンのこの新作では一名がタハルダントを電化アンプリファイドして弾いているんですね。エフェクターだってかましてあるかも。

今回のアル・ビラリ・スーダンは、テハルダント三台(うち一台が電化)、カラバシ二台(カラバシは打楽器で、大型のヒョウタンを二つに割ったもの)という五人編成なんですが、もうこの電化テハルダントの刺激的なサウンドがあまりにも強烈すぎて、ほかのことがぜんぶふっ飛んでしまいますよね。ノイジーでトランシー。乱暴に投げつけるようなトーキング・ヴォーカルもこのサウンドによく似合っています。

しかしこういった音楽、はじめて体験するわけじゃありません。bunboniさんもお書きのように、以前タラウィット・ティンブクトゥのことをぼくも書きました。ビリビリいう電化テハルダントのサウンドと、大地を直接叩きつけているようなカバラシの野太いビート。いやあ、これはすごいアルバムで、ぼくはこれで一発KOされちゃったんですね。

これをすでに体験していたからこそ、今回のアル・ビラリ・スーダンの『Tombouctou』でそんなにビックリしないっていうか、でもテハルダント三台+カラバシ二台ですから、今回のこっちのほうがよりサウンドに厚みが出ているなという気はします。

しかもアル・ビラリ・スーダンのほうは、特に複数のテハルダントのはじくフレーズが、それでもわりと細かく計算されているように聴こえます。インプロヴィゼイションでしょうけれども、リードする電化テハルダントのあいまを縫うように生音テハルダントが繊細なフレーズをくりかえし入れ込んでいるのは印象に残りますね。特に8、9曲目あたり。

かなりやかましい(ときには気に障ったりすることもある、特に真夏だと)音楽なので、TPOを選びますけどね。

(written 2020.9.1)


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