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モダナイズされたゲール古謡 〜 イニ・ケー

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Inni-K / Iníon

ダブリンの歌手、イニ・ケー(でいいの?読みがわからん Inni-K)の最新作『Iníon』(2022)がとても美しいです。この歌手のこともアルバムのことも、いわもさんのツイートで知りました。

シャン・ノース(sean-nós)と呼ばれるゲール古謡を、モダナイズした音楽。元来は無伴奏独唱されるものですが、このアルバムでは自身の弾くフィドル、ピアノ、シンセサイザーにくわえ三名、ドラムス、クラリネット、チェロが参加していて、ややジャジーな響きもあります。一曲だけ独唱も。

イニ・ケーはソングライターでもあって、アルバムの収録曲はすべて自作なんですが(Eithne Ní Chatháin名義でのクレジット)、まったくアイリッシュ・トラッドのマナーに沿ったもの。英語曲もあります。歌いまわしだって伝統的なのに、伴奏のサウンドはかなり斬新でコンテンポラリー。

そこに本作が耳を惹く最大の理由がありますね。現代音楽や21世紀ジャズのファンが聴いても入っていける衣をまとっていて、アイリッシュ・トラッドの世界でのこうしたチャレンジはいままで聴いたことがないですが、すばらしいと思います。

イニ・ケーのヴォーカルにはエモーションが込められておらず、きわめてクールで冷徹、淡々としていて、聴き手と距離を置いているかのようでありながら、それでもやさしくてあたたかく親しみやすいフィーリングがあります。着地せずただよっているかと思えばアーシーにも響いたり。鮮烈な印象を残す歌です。

(written 2022.4.23)

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