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ブルーズ界最長老にして最現役 〜 バディ・ガイ

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Buddy Guy / The Blues Don’t Lie

1936年生まれ58年デビューだから今年でバディ・ガイは86歳キャリア64年目。影響を与えたギターリストなら星数で、代表的有名どころだけでもエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、ジミ・ヘンドリクス、キース・リチャーズ、スティーヴィ・レイ・ヴォーンなどなど。

そしてそれら弟子格のだれよりも2022年ではバディ・ガイのほうがばりばり最前衛の現役感を発揮しているっていう。これはすごいことですよ。そう「すごい」なんていう安直すぎてふだんは使えない表現しか出てこないほど、このブルーズ・ギターリスト&シンガーは突出しています。

出たばかりの新作『ブルーズ・ドント・ライ』(2022)でもそんなとんがったブルーズ表現が健在で、加齢で衰えるなんてこととはまったく無縁。どうなってんのこのひと?音楽じたいはずっと不変のもので、いまさらとりたててどうということもないんですが、こんな作品を2022年に86歳が発表できるっていう事実は、はっきりいって特例的だと思います。

本作ではメイヴィス・ステイプルズ、エルヴィス・コステロ、ジェイムズ・テイラー、ボビー・ラッシュ、ジェイソン・イズベル、ウェンディ・モーテンといった豪華で多彩なベテラン・ゲストもむかえ、それらもすべてバディ・ガイの土俵にひきずりこんで飲み込んでしまうという器のデカさを如実に示しているのもすごい。

楽しくグルーヴするファンク・ブルーズが中心だけど、たとえばメイヴィス・ステイプルズやジェイムズ・テイラーと共演したものなんかはややシリアスな社会派の眼差しも歌詞にあって、いかにもこの共演者だねっていうタイプをしっかり発揮しているのも好ましく、それでいてギターは変わらずバディ・ガイのサウンドを出しています。

それもこれも吸収しての「ブルーズ」なんだよという老熟な境地はやはりしっかり聴きとれて、考えてみればこのジャンルはむかしからある意味社会派な音楽でもあったというか、個と社会がピッタリ張り合わせになった地点をこそつづってきたもの。60年以上ブルーズをやってきたバディ・ガイなら骨髄に沁み込んでいる事実でしょう。

つまり不変=普遍の人間感情とか存在のありようをペンタトニックに乗せて表現してきた音楽であるブルーズなんて、決して時代遅れになることもないし流行とか更新とかそういったことを意識する必要もないっていう。むかしから変わらないこの音楽の根っこの核心部分だけ煮詰めて煮詰めて凝縮したようなある種のイコンと化したのが、2022年のバディ・ガイだということでしょうね。

(written 2022.10.2)

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