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ロニー・フォスター再起動

(3 min read)

Ronnie Foster / Reboot

ベテラン・ジャズ・オルガン奏者、ロニー・フォスターの、なんと36年ぶりの新作アルバム『Reboot』(2022)が出ましたね。ブルー・ノートからのリリースなので、例によって会社がソーシャル・メディアで前宣伝をどんどんやっていて、先行トラックも二つ聴けたんで、待ちきれないほどでしたよ。

こ〜れが!まったく期待にたがわない内容で、カッコいいったらありゃしない。特にオープニングのアルバム・タイトル・ナンバーなんか、もうしょんべんチビりそうになるほどハンサム。アルバム全体ではちょっぴり時代を感じさせるというか、アシッド・ジャズ〜レア・グルーヴ的な内容かもと思うんですが、この1曲目は文句なくコンテンポラリーにシャープでカッコいい。

2020年代的なコンテンポラリーネスを表現していると思えるのものはほかにもあって、たとえば、ややラテン・テイストもまぶされている2曲目「Sultry Song II」の都会的でメロウなグルーヴとか、ロニーの無伴奏オルガン独奏による4「J’s Dream」の甘美なデリケートさ加減も絶品だし。

冒頭でストリングス・サウンドが聴こえるのはロニーによるキーボード・シンセサイザーかなと思う8曲目「After Chicago」もややラテン。このミディアムな感じもいまふうでいいですね。と同時にこうしたものは1980年代からいっぱい聴けて、70年代から活動しているロニーもやっていたものではあるんですが。

ラテンといえば本作には強烈なのがあります。6曲目「Carlos」。いきなりジェリー・ロペスによるフラメンコ・ギターが鳴って、あれ?と思っていると、定常ビートが入ってきてからはタイトルどおりサンタナっぽく展開します。ロニーのギターリスト、マイケル・オニールもカルロス・サンタナの音色とプレイぶりでそのまま展開。後半ではルイス・コンテ、レニー・カストロ二名によるラテン・パーカッションも炸裂します。

おそらくロニー本人であろう?ヴォーカルが入る7曲目「Hey Good Lookin’ Woman」は、ジャズというよりリズム&ブルーズ・ナンバー。5曲目「Isn’t She Lovely」はもちろんスティーヴィ・ワンダーのあれで、『ソングズ・イン・ザ・キー・オヴ・ライフ』(1976)で一曲起用してくれたことへの返礼なんでしょうね。ここではジャズ・シャッフルで料理されています。

ストレートな4/4拍子のメインストリーム・ジャズである3曲目「Swingin’」は定型ブルーズ。アルバムの基本になっているオルガン・トリオ(ロニー、マイケル・オニールg、クリス・フォスターdms)でやる従来的なもので、なかなかファンキー。そうそう、クリスはロニーの子なんだそうです。

アルバム・ラストの9「After Conversation with Nadia」でだけロニーはアクースティック・ピアノを弾いています。しかも独奏。しめくくりにしっとりと内省的につづるおだやかな様子は実に居心地よく、格好のクローザーだと思えます。

(written 2022.7.17)

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