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ティファナ・ブラスみたいなのが好き 〜 フラット・ファイヴ

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The Flat Five / Another World

萩原健太さんに教えてもらいました。

フラット・ファイヴはシカゴ本拠の五人組ハーモニー・ヴォーカル・グループ。二作目にあたるという2020年の『アナザー・ワールド』を聴きました。なかなか楽しいんですよね。五人はヴォーカルだけじゃなくそれぞれ楽器も担当していて、歌に演奏にと、自分たちでこなしているみたいですね。

1曲目はなんだかちょっとチープな感じのサウンドに乗せて、でも立派で楽しいヴォーカル・コーラスが聴かれます。曲もみずから書いているみたい。その後も、サンシャイン・ポップふうあり、小粋にスウィングするジャズっぽい小唄あり、ポップ・カントリー系あり。ときにママス&パパスのようでもあり、ジャッキー&ロイのようでもあり、アニタ・カー・シンガーズのようでもあり、スターランド・ヴォーカル・バンドのようでもあり、中期ビーチ・ボーイズのようでもあり、それこそNRBQのようでもあり。

特にジャジーなヴォーカル・グループのことをぼくは連想するんですが、なかでも今回特筆すべきなのは7曲目「バタフライズ・ドント・バイト」と11曲目「オーヴァー・アンド・アウト」です。これら二つはティファナ・ブラス・サウンド+サンドパイバーズみたいな初期A&Mっぽい感じなんですよね。個人的におおいなるお気に入りです。7曲目がことにティファナ・ブラスっぽい。

バンジョー・サウンドがいい感じに響く10曲目も好きだけど、アルバム・ラストの11曲目「オーヴァー・アンド・アウト」。これがもうほんとうに大好き。これはリズムとホーンズ、特にトランペットがキューバ音楽ふうのラテン風味、ソンっぽいところをを濃厚にかもしだしているんですよね。ちょっとメキシコふうでもあって、やっぱりティファナ・ブラスだなと思わないでもないですが、こっちはもっとカリブ寄りですね。いやあ、気持ちいい。

ばっちり歌えるメンバーがそろっているものの、全員でこれみよがしにぶわ〜っとオープン・ハーモニーをキメるとかそういう方向性ではなく、リード・ヴォーカルに対してとても巧みなハーモニー・ラインをさりげなく一本くわえて、なんともふくよかな味わいを演出しつつ、これまた緻密なヴォイシングをほどこしたウーアー系ハーモニーを背後に配する、みたいな感じの、ハイセンスなヴォーカル・アレンジ力に脱帽です。

(written 2021.1.16)

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