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コテコテなジミー・フォレストもちょっと 〜『アウト・オヴ・ザ・フォレスト』

(4 min read)

Jimmy Forrest / Out of the Forrest

きのう書いたジミー・フォレストの、ステレオタイプにぐいぐい迫るコテコテ系ブロウ・テナーも聴いておきたいぞと思い、もう一作、Spotifyで検索し『アウト・オヴ・ザ・フォレスト』(1961)を聴きました。ピアノ・トリオをしたがえてやっているワン・ホーン・カルテットもの。

リズム&ブルーズ寄りの音楽なんですが、これはプレスティジ・レーベルからの発売で、そう、プレスティジはジャズばかりじゃなくけっこうリズム&ブルーズ(寄りのジャズ)もリリースしましたよね。きのう書いた『ブラック・フォレスト』がブルーズ・レーベル、デルマークからの発売でしたし、このへんはなかなか興味深いところです。

『アウト・オヴ・ザ・フォレスト』のリズム・セクションには、ピアノでジョー・ザヴィヌルが参加しているという点も目をひきます。1961年ですから、もっとのちのキャノンボール・アダリー・コンボ時代のあのファンキーなスタイルにはなっていないんですが、それでもぼくは大のザヴィヌル・ファンですからね、参加しているというだけでこのアルバムを聴いてみたいと思うほど。

1曲目「ボロ・ブルーズ」からして、もうあれです、かの「ナイト・トレイン」路線そのままの、こってりブロウ。ブルージーでファンキーで、もうたまりません。これは完璧に1940年代のジャンプ系ホンク・テナーですね。あれこれ考えず、とにかくちょっと聴いてみて!クサくてとてもたえられないと感じる向きもおありじゃないかと思うほどですよね。

2曲目以後もアルバム・ラストまで同様の路線が続くんですが、楽しいのはスタンダード・ナンバーをやってもこのアルバムでのジミー・フォレストはコテコテ系に料理しつくしてしまっていること。たとえば2「アイ・クライド・フォー・ユー」はビリー・ホリデイも歌ったかわいらしいポップ・チューンだったのに、なんですかこの吹きっぷりは。ホンキーにやりまくるブルージーさがたまりません。演奏後半ではイリノイ・ジャケーばりに同一フレーズをなんども反復してぐわぐわっともりあげる下世話さ。

スタンダードといえば6曲目「イエスタデイズ」(これもビリーが歌ったなあ)もひどいですよ。朗々と吹き上げるジミー・フォレストのホンク・テナーで、曲そのものがまるで別のものに変貌しちゃっています。音色もジャンプ系テナーのあの硬く丸いもので、ラヴ・バラードっていうよりストリップ・ショーのBGMみたい。うなりをあげながらグォグォと攻めるあたりのテナーの迫力にけおされそうです。

小唄ものですらこんな調子なんですから、ブルーズ・ナンバーなんかもうエンジン全開でこれでもかとノリノリ下世話に攻めまくるジミー・フォレスト。こういったダーティなブロウ・テナーがもとから本領のひとではありますが、それにしてもこのプレスティジ録音ではいったいどうしちゃったんでしょうかねえ。会社側の制作意図というか企画で、こういう路線でやってくれという指示が出ていたのかもと感じますよね。

曲単位というんじゃなくアルバム一作まるごとぜんぶホンク・テナーでコテコテに塗りつぶしているという意味では、ブラック・ミュージックっていうか、ジャンプ・ブルーズ、リズム&ブルーズなどのファンには大歓迎されそうなアルバムなのでした。もちろんぼくは大好き。

(written 2020.12.18)

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