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ちょっぴりロックっぽいジョー・ビアード(2)〜『ディーリン』

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Joe Beard / Dealin'

ブルーズ・マン、ジョー・ビアード2000年のアルバム『ディーリン』でハーモニカを吹いているのはジェリー・ポートノイ。マディ・ウォーターズのバンドでやっていた、かの強者ですね。エリック・クラプトンのブルーズ・アルバムにも参加していましたし、シカゴ・ブルーズ黄金時代のサウンドを現代に具現化している最良のひとりでしょう。ジェリーはこのジョーのアルバム全曲で吹いているわけじゃありませんが、参加しているものは濃厚なシカゴ・ブルーズの香りがします。

たとえば1、3曲目など、間違いなくストレートな王道シカゴ・ブルーズそのまんまで、ジェリーのハーモニカも実にいい感じ。ジョー・ビアードがここまでやるなんてねえ。バンドは白人が中心の編成みたいですけど、こういったブルーズ・ワールドはもはや伝統芸能になっているともいえますから、ある種の「型」みたいなものになっていて、学べばだれでも継承できるんでしょう。ましてや彼らはアメリカ人ですし。

このアルバムで個人的に印象に強く刻まれるのがピアノ、エレピ、オルガンといった鍵盤楽器です。弾いているのはやはり白人のブルース・キャッツ(Bruce Katz)。バッキングでいいサウンドを出しているばかりか、ソロではたぶんどの楽器よりも多くの時間を与えられているんじゃないですか。主役ジョーのヴォーカルの次に目立つのがこのアルバムでは鍵盤ですよ。ブルースはどの楽器を弾かせてもうまいですが、特に4曲目のスロー・ブルーズでのハモンド・オルガン・プレイなんか、うなります。ジャジーでもありますしね。

ピュア・ブルーズというよりリズム&ブルーズというか、もっとさらにロックンロールに近いなと思えるものだってアルバムにはいくつかあります。2曲目で早くもそんな感じが出ていますが、本格的には7曲目の「ギヴ・アップ・アンド・レット・ミー・ゴー」。やはりジェリーがハーモニカを吹いているにもかかわらず、これはロック調です。「ハイ・ヒール・スニーカーズ」みたいですよね。シャッフル・ビートもロックっぽいですし。

10曲目の「ロング・トール・ショーティ」もそんな「ハイ・ヒール・スニーカーズ」調のロック・ナンバーでしょう。これらの曲では主役のジョーも粘っこくないアッサリした歌いかたに終始していて、ギター・ソロがジョーなのかデューク・ロビラードなのか判別できませんがそれもブルージーな感じを消していますよね。12曲目「ユード・ベター・ビー・シュア」もロック・ナンバーに近いフィーリングですね。

そうかと思うと11曲目「ザット・ソー・コールド・フレンド・オヴ・マイン」はジャズ・(ブルーズ・)ナンバーと言いたいほどの内容で、これもなかなかいい味です。アルバムの中盤6曲目とラスト13曲目には、やはり伴奏なしのジョー・ビアードのエレキ弾き語りが収録されていて、それらではジョン・リー・フッカーか R. L. バーンサイドかっていうようなブルーズのエグ味を聴かせてくれているのが個人的にはうれしいです。

(written 2020.2.21)

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