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ヴォーカルも充実の、真摯で温かみに満ちたアクースティック・カヴァー集 〜 ローリー・ブロック

(3 min read)

Rory Block / Ain't Nobody Worried

アクースティック・ブルーズ・ギターリスト、ローリー・ブロックについては、以前2020年の『プルーヴ・イット・オン・ミー』を当時の新作として書いたことがあります。二年経って新作『Ain't Nobody Worried』(2022)が出ました。

最新作も女性音楽家のエンパワーメント企画の一環として制作されたもので、今回はブルーズと限定せず、ブルーズ・チューンもあるけれどリズム&ブルーズ、ソウル、ロック、ポップスなどさまざまなジャンルの女性歌手による曲をローリーなりにアクースティック・カヴァーしたもの。

いちおう全曲のオリジナル歌手をリストにしておきましょう。

1)ステイプル・シンガーズ
2)グラディス・ナイト&ザ・ピップス
3)メアリー・ウェルズ
4)トレイシー・チャップマン
5)ココ・テイラー
6)ボニー・レイト
7)エタ・ジェイムズ
8)ローリー・ブロック(セルフ・カヴァー)
9)マーサ・リーヴズ&ザ・ヴァンデラス
10)キャロル・キング
11)エリザベス・コットン

曲により弾き語りだったりビート伴奏が付いていたりしますが、どんな曲をやってもバラつかずローリーの独自カラーが一貫していて統一性がしっかり感じられるのはベテランならではでしょうね。一つのアルバムを聴いたという心地がします。

個人的には4「ファスト・カー」あたりからグッときますが(あのころトレイシー・チャップマンに惹かれていた)、それでもたとえば5「クライド・ライク・ア・ベイビー」みたいな曲での輝きはやはりひときわ。本来領域っていう感じで、スライド・ギターも聴きごたえあり。

そして7「アイド・ラザー・ゴー・ブラインド」。これは曲じたいに個人的な思い入れがとっても強く、サザン・ソウル・スタンダード(とくくる必要はないかも)のなかでもモスト・フェイヴァリットですからね。こうやってローリーのアクースティック・レンディションが聴けたのは喜び。ヴォーカルもはまっていると思います。

9「ダンシング・イン・ザ・ストリート」みたいな曲を選ぶのはやや意外でしたが、曲想にあわせてローリーも普段着とはちょっと違う派手目アレンジで、バック・コーラスもしたがえてにぎやかに楽しくやっています。グルーヴィですよね。

だれのどんな曲かを言う必要ないくらいになっている10「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」のカヴァーは真摯で温かな人間味を感じさせる内容で、いままでいくつも聴けた有名ヴァージョンの数々に比し遜色ないできばえ。ヴォーカリストとしての力量もわかります。

(written 2022.10.21)

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