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ブルーズ女子 〜 マリン・ブラッドリー

(3 min read)

Muireann Bradley / I Kept These Old Blues

若いくせにどうこうとか、ぼくはあんまり言わないんですけど。年齢差別だし、そもそも10代でデビューする音楽家はめずらしくもないでしょ。でもこのマリン・ブラッドリーのデビュー作『I Kept These Old Blues』(2023)のばあいは17歳の少女ということがことさら特別なことに思えてきます。

なんたってやっているのがブラインド・ブレイクそっくりな第二次大戦前のオールド・ブルーズ弾き語りなんですから。マリンというか日本のレコード・ショップなんかではミューリアンと表記されていますけど、アイリッシュで、YouTubeにある弾き語り動画を視聴すると自己紹介であきらかにマリンと発音していますからね。

ともあれ、父親が熱心なオールド・ブルーズ・ファンで、家でも車のなかでも聴きまくり、そのよさを熱心に語りまくるというひとであるらしく、そういう家庭環境で育ったせいで子のマリンも自然とオールド・ブルーズ・ファンになったんだとか。

しかも父は自分でギターを弾くので、それを聴いていたマリンは自分でもやってみたいと思うようになり、9歳のときに小さなギターを買ってもらって弾きはじめたみたいです。

育った家庭環境に影響されて古いジャズとかブルーズとかその他レトロな趣味を持つようになったという例は近年きわめて多いようにみえます。いままでも多数書いてきました。それがマリンのばあいはブラインド・ブレイクみたいなブルーズだっただけで。

アルバムはゲイリー・デイヴィス師の「キャンディマン」ではじまって、以降、ミシシッピ・ジョン・ハート、ブラインド・ブレイク、エリザベス・コットン、ステファン・グロスマン、ジョン・フェイヒィらのレパートリーがならんでいます。

フィンガー・ピッキングで弾くギターのほうの腕前はすでに一級品。自分でもそこに自信があるのかそれを聴かせるギター・インストルメンタルも二曲あります。じつにうまいですよ。チューニングも多彩なものを駆使。

そしてヴォーカル。17歳が「無垢」だとは必ずしも思わないんですがぼくは。でもこのアルバムで聴くマリンの声はかなり幼いです。そこがですね、こんなガキじゃあブルーズやったって説得力ないよと思うか、それともおもしろい効果を産む結果になっていると思うかで評価は分かれそうですよね。

(written 2024.2.12)

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