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しんどいとき助けになる音楽(56)〜 マイルズ『セヴン・ステップス・トゥ・ヘヴン』

(3 min read)

Miles Davis / Seven Steps to Heaven

マイルズ・デイヴィスの『Seven Steps to Heaven』(1963)ではLA録音の三曲(1、3、5)が大好きという話をなんどもしています。ですからくりかえす必要もないとは思うんですが、古いバラードばかりとりあげてカヴァーしたもの。

それら三曲は基本的にロス・アンジェルスのセッション・ミュージシャンが伴奏をつとめていて(ベースだけロン・カーター)、サックスなしマイルズのワン・ホーンです。ワン・ホーンっていうのがまたよくて、この天性のバラディアーの特質を存分に活かしたできあがりになっています。

おだやかだしまろやかで、リリカルなことこの上ない演奏ぶりに心身とろけちゃうんですが、こうしたものはマイルズの生涯でこのセッションがラストになったように思います(81年復帰後を除く)。50年代にはあれほどあったんですが、この後は新主流派な方向を強めていきますから。

そして本作で残りの三曲(NYC録音)がそうした新主流派方向への端緒だったわけですが、今回アルバム全体をもう一回聴いてみたらそれらもあんがい聴きやすいよね、なかなかいいじゃんと思えました。ぼく自身どんな心境の変化なのかわかりません。

ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウィリアムズという新しいリズム・セクションとの初録音で、みずみずしさがあふれていてとってもいじゃんと思えましたね。

正直いってLA録音の三曲とはあまりにもおもむきが違いすぎて、アルバム全体としてはちょっとどうかな?と思わないでもないです。それに個人的な嗜好としては熟れた退廃が好きっていうのもありますから、そのせいでますますLAでの三曲がいいんですが。

ですからアルバム・トータルではイマイチかもしれません。水と油で溶け合っていないんですが、若々しいニュー・ヨーク録音の三曲もなかなかいいぞ、うん、アルバム全体が退廃バラードじゃなくてかえってよかったのかも、とすら思えてくる今日このごろであります。

(written 2023.11.22)

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