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ぼくの『ゲッツ/ジルベルト』愛を言明できる時代にようやくなった

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João Gilberto, Stan Getz / Getz / Gilberto

それで、これもレイヴェイが好きだということで、ただそれだけの理由(だけでもないんだけどほんとは)で、聴きなおし見なおすようになったジョアン・ジルベルト&スタン・ゲッツの『ゲッツ/ジルベルト』(1964)が、なんだかんだいってやっぱいいよね。

このブログでも以前はボロカス書いてしまいましたが、この手の音楽がまさかここまで復権してくるとはねえ、そのころ想像していませんでした。迂闊にものは言えないもんです。ちょっと前その記事にアクセスが多かったのはそういうことだったんですね。

レイヴェイも「プラ・マシュカ・メウ・コラソン」を選んでいたし、じっさいこういったあたりの、決してハードにスウィングもしない、おだやかに静かにそっとやさしく中低音域でささやきかけてくるような雰囲気を持った音楽こそ、現行レトロ・ジャズ・ポップス・シーンのというかレイヴェイ・ミュージックの主源流。

ですから「ドラリス」なんかもいいし「デザフィナード」(は「デサフィナード」が標準表記だけどジョアンの歌で発音を聴いてみて)もすばらしいです。さほどスウィンギーじゃなくじっとたたずんでいるような陰キャ・ムードがいいので、「イパネマの娘」「ソ・ダンソ・サンバ」あたりはそうでもありません。

サロン・ミュージックふうの密室性と広がりを同時に香らせている録音というか音響も実にいまっぽく、レイヴェイなんかそのへんまで本アルバムからコピーしているんじゃないかと思うほど。そしてムーディでおしゃれですし。

自室や雰囲気のいいカフェでラテやカプチーノを楽しんでいるときに聴くにはこれ以上なくピッタリくる音楽で、骨がないとかガツンとこないとかブラジル音楽がわかっていないとかいままでさんざん言われてきて、ぼくもちょっとそう思っていましたけど、いまとなってはすべて手のひら返したい気分。

『ゲッツ/ジルベルト』はきれいで良質な音楽ですよ。「ホンモノ」のボサ・ノーヴァ、ブラジル音楽じゃないかもしれませんけど、これはムーディでちょっとおしゃれな雰囲気のいいジャズ・ポップスですから。そこにボサ・ノーヴァ・インフルーエンストな要素が混ぜ込まれているだけの。

(written 2022.12.14)

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