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デジタル・ピアノは永遠にチューニング不要

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いまはバンドの仲間内で練習用ほかで音源を共有したい際は、メールやメッセージング・アプリなどに添付してネットで送ればいいし、オリジナルなら音源共有サイトなどに上げるのもいいでしょう、実際そうしているんだろうと思いますし、かりに物体に入れて持ち運ぶ必要があったとしてもスティック型のメモリーや、もちろんディスクでもいいんですけど、それでやればピッチがみんなのあいだで狂ったりしないはず。

これがですね、むかし、そう、いまから40年ほど前、ぼくが高校生時分にバンドをやっていた時代にはカセットテープでやりとりしていたわけですよ。するとですね、ピッチ(音程)にかんし重大な懸念が生じるばあいもありました。各自が持つテープレコーダーやラジカセなど再生装置の回転数の問題で、渡した相手のてもとで微妙にテンポが速くなったり遅くなったりして、それで若干音程が高くなったり低くなったりするんですね。

複数人で同じ一個の曲を練習したいわけなのに、それぞれでピッチが微妙に違うなんていうのは致命的です。これはぼくがやっていたようなレッド・ツェッペリン・カヴァー・バンドでもそうでした。高校生時代ですからね、まだお小遣いをためてレコードをやっと一枚買えるかどうかとかいう世界です。課題曲が収録されているアルバムを持っているのは仲間内でも少数。その持っているやつがカセットテープにダビングしてみんなに配ります。

しかしですね、カセットデッキやラジカセやの機器メーカーや、あるいは個体差もあったんじゃないですか、テープの回転速度はですね。自分の経験でしか語れませんが、やっていたのはツェッペリン同様の4ピース・バンドで、だから音程の問題がシビアになるのはギターとベースですよね。ぼくはヴォーカルでしたからちょっとくらい音程が違っても合わせるのはラクチンですが、ギターとベースはたがいにもし把握している音が半音も上下したら(なんてことはなかったけど)大問題ですよ。

当時は(いまも多くは)A=440Hz になっていたと思います。(ギターの5弦を合わせる)音叉がそうでしたし、アナログ・チューナーなんかもそれ基準だったはず。そういえばチューニング・パイプなんてものもあったなあ、いまもあるの?ギターやベースやなど、あるいはヴァイオリン族や三味線などなど、つまり弦楽器はその場でパッとチューニングを演奏者各自で修正・変更しやすいですけど、ピアノなど鍵盤楽器はそうはいきませんよねえ。ほぼ固定的でチューニングもその道の専門家がやります。だからピアニストと共演することでもあれば、そのピアノが出す A なら A の音に(それが狂っていても)みんなが合わせるしかないんじゃないですか。

とにかくですね、1970年代終わりごろのアマチュア高校生バンドのメンバーたちは、知識も技術もないし頭も固いしで、だからもらったテープと同じ音じゃないと演奏できないよ!みたいな感じになることがあったかなかったか、でもいや、現実にはですね、たとえばツェッペリンのこの曲、キーは Am だ(「天国への階段」)、それで基準は A=440Hz でやっているからギターやベースが各自それでチューニングして自宅で音を出してみれば曲のここはこの音になるはず、っていうことで、いざメンバーが顔を合わせてバンドでやって、ピッチがずれていて戸惑うなんてことはありませんでした。ラジカセなんかで聴いたものは若干狂っていたとしてもですね。

それにそもそもレコード盤をまわすターンテーブルの回転速度だって若干のメーカー差、個体差があったかもしれませんしね。ここが正確じゃなかったらほかも全滅です。自分の、あるいはレコード所有者のターンテーブル回転が本当に正確であったかどうかはわからないんですから、ハナからレコードで聴いた際のピッチが正しくなかったかもしれないし、その上そこからカセットテープにダビングしたものをいろんな環境下へばらまくわけですからねえ。

楽器のチューニングにかんしては、上でも書きましたように弦楽器類はチューニング変更がきわめて容易、ということは簡単に狂いやすい種類の楽器であるというのも確かなことです。だからライヴなどの際、ギターリストは曲間でよくペグをまわして微調整しているでしょう。ピアノはそれに比べればまだ狂いにくいとはいえ、グランド・ピアノやアップライト・ピアノなどアクースティック型はときどき調律師にみてもらわないといけないです。

その点、デジタル・ピアノはいいですよ。ぼくの持つヤマハのデジタル・ピアノ P-125は A=440Hz で工場出荷時にチューニングされていますけれど、どんなに弾いてもこれが永遠に狂わないんですって。買ってみるまでこのことをぼくは知りませんでした。さらにこれを微妙に上げたり下げたりも各自でカンタン自由にできるんです。いまは442くらいがスタンダードなんでしょうか。その微妙なチューニング変更もワン・タッチなんですよ。

それにしても本当にデジタル・ピアノっていいですね。ぼくのはヤマハ製だけど、フェンダー・ローズみたいな(とは書いてない、他社だから)エレクトリック・ピアノ音も、ハモンド B3みたいな(とは書いてない、他社だから)オルガンの音も、チェンバロ音も、それからソリーナみたいな(ってみんな憶えてる?)ストリング・アンサンブルの音だって、ボタンを一個押すだけで出せちゃうんですからね。自動デモ演奏もできるし、打楽器音の伴奏だって付けられます。

A=440Hz のチューニングが絶対に狂わないから、CD などを聴きながらあわせて弾いていると、あ、この CD はピッチがちょっぴり違っているぞなんてことにもすぐに気づけます。たとえばこのあいだ奄美島唄の平田まりなのアルバムにあわせてデジタル・ピアノを弾こうとして(そんなヤツおかしいちゅ〜ねん)ピッチが合いませんでした。平田は三味線弾き語りですからね。そういった CD はほかにいくつもあります。

話がとっちらかってますが、たとえば A の基準音のヘルツ数の問題や(最近ピッチがやや上がり気味らしい)、プロのピアノ調律師がやる平均律チューニングとはどれほどのマジックなのかということや、あるいはまた回転数の違いで音程が微妙に狂っている戦前の古いジャズやブルーズ音源の問題や(どうして Spotify にあるもの、たとえば1920年代のサッチモは CD のとピッチが違って聴こえるのか?いったいどれをソースにしたのか?)など、たくさん関連する話題があることは今日は扱いませんでした。

またの機会に。

(written 2020.1.28)

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