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趣味よく上品なブラジリアン・ジャズ・ハーモニー 〜 エドゥ・サンジラルジ

(2 min read)

Edu Sangirardi / Um

あっ、これはアンナ・セットンの一作目(2018)で弾いていたひとだったのかぁ。ブラジルはサン・パウロのジャズ・ピアニスト、エドゥ・サンジラルジの初リーダー・アルバム『Um』(2022)がきれいでなめらかでおだやかで、すばらしいです。こういうのぼくは大好きなんですよ。

本作にはアンナ・セットンからの流れもあります。8曲目「Toada」はアンナのファーストに収録されていた共作ナンバー。もちろんここではインスト演奏されているわけですけど、ふんわりやわらかいホーン・アンサンブルがただようなか静かにピアノがメロディをつづるさまは、まるで初夏の陽光のもとさわやかで心地いい風にあたりながら緑の公園をゆっくりお散歩しているような気分です。

そもそもアルバム全体がそんなムードにつつまれた快適で居心地いい音楽。個人的に特にいいなと感じる趣味のよさと上品さは4〜6曲目あたりの流れです。ジャズ・サンバを基調としたなめらかでスムースなサウンドと軽いビート感、そこにボサ・ノーヴァ・テイストのあるスネア・リム・ショットもおりまぜながら、夢見心地のソフトなフィーリングを表現するさまにはため息が出ますね。

特に、たぶんエドゥ本人が書いているであろう(プロデューサーのスワミ・ジュニオールかも)管弦アンサンブルのリッチでやわらかい、たゆたうような響きは特筆すべきもの。美しいバラードである5曲目で聴けるデューク・エリントンかギル・エヴァンズかっていう、そっとおだやかに雲が動いていくようなホーン・サウンドの重なりと動きは、しかしそれでもブラジル人音楽家だというのがわかるハーモニー個性を発揮していて、骨まで溶けていくような気分です。

前半まず静かなピアノ独奏で出て、あぁきれいだと聴き惚れているとその後ストリングス&木管アンサンブルが入りふくらみをみせる6曲目の流れも絶品。アコーディオンのトニーニョ・フェラグッチが参加している9曲目はややユーモラスで、ちょっぴりショーロふうな味つけもありますね。

(written 2022.5.29)

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