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ハラムで表現するアフリカン・クールネス 〜 ベン・アイロン

(3 min read)

Ben Aylon / Xalam

現在セネガルに住んでいるだろうベン・アイロンは、イスラエル生まれのパーカッショニスト。サバールはじめ各種アフリカン・ドラムの演奏に卓越した腕をみせ、中東地域出身ながら「セネガルの次世代パーカッショニスト」と賞賛されている存在です。

そんなベン・アイロンの最新作『Xalam』(2021)はインターナショナル・デビューとなったもの。サバールをふくむ10種の太鼓を組んだドラム・セット(がベンの独自特徴)にくわえ、アルバム題どおりハラムという西アフリカ伝統の弦楽器を大きくフィーチャーしています。

独自のドラムスと、ハラムとジェリ・ンゴニ(は見た目も酷似しているし、同じような楽器では?)と曲によってはヴォーカリストと、それだけのアンサンブルでできあがっているように聴こえるこのアルバム、ゲスト参加のドゥドゥ・ンジャイ・ローズとかハイラ・アルビーとかはSpotifyのトラックリストでも名前が出ています。

個人的には歌ものよりインストルメンタル曲のほうがグッときますが、ドラムスだけでなくハラム(やジェリ・ンゴニ)の演奏もベン自身なのかもしれません。そのへんのクレジットが書かれてあるサイトがないか、さがしたんですけれども見つけられませんでした。でもきっとベンひとりの多重録音じゃないかと思うんですよね。

変幻自在で複合的なリズム形態を表現しているといういかにもな西アフリカ音楽ではありますが、聴いた感じぼくには弦の強いバズ音(三味線のさわりみたいなもの)も魅力的なハラムの演奏のほうが目立っているように思えるし、実際心に残るのもそっちです。

アルバム題にもしているんだし、ベン自身このワールド・デビュー作ではハラムを大きくフィーチャーし、聴き手にもそちらをアピールしたいという気持ちがあったんじゃないでしょうか。ビート感もそんな強烈に跳ねるとかもりあがるとかいう曲はなく、どっちかというとクールで静かにたたずんでいるミニマルな曲調のものが中心。

そして、ベン自身の弾くハラム・サウンドが、たしかにンゴニにそっくりだけど(くどいが同系楽器)ときおり親指ピアノのように聴こえる瞬間もあり、おそらく多重録音で折り重ねてタペストリーに編んであるハラム・アンサンブルが、まるで親指ピアノ群のポリ・レイヤーにも聴こえるんですよね。

4曲目「SeneGambia Pt.2」(は後半強靭なビートが効くけれど)や、ハラムを電化アンプリファイドしてあるだろう6「Benn Takamba」で聴ける強いノイズ感というかディストーション、さらに8「Cafe Touba」9「Mon Lov」で特徴的なアフリカン・クールネスがいいなと思います。

(written 2021.12.13)

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