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いまごろビー・ジーズに(再)入門する 〜 バリー・ギブ『グリーンフィールズ』

(4 min read)

Barry Gibb / Greenfields: The Gibb Brothers’ Songbook (Vol.1)

萩原健太さんに教わりました。

ほんとうにすばらしくきれいなジャケットですよねぇ。ビー・ジーズのギブ三兄弟のなかで唯一現在でも存命のバリー・ギブが、かつて兄弟名義で書き歌った名曲の数々を、一曲ごとにさまざまなゲストを迎えて歌いなおした、ちょっとしたベスト盤的な新録音のソングブック、それが『グリーンフィールズ:ザ・ギブ・ブラザーズ・ソングブック Vol.1』(2021)であります。

ぼくにとってのビー・ジーズは、といえばですね、実を言うと「ステイン・アライヴ」や「ナイト・フィーヴァー」でイメージが決まってしまっていたバンド。ディスコ路線。1977/78年のヒット曲で、ちょうどぼくが高校生だったときに学校や街中でこれでもか!とどんどん流れていましたから、耳にしなかった若者は当時いなかったはず。内心、ケッ!とか思っていました。

しかしビー・ジーズ本来の、というか、そういうのとはちょっと違うポップ・カントリー路線のほうに彼らの芳醇な持ち味があったのは間違いないことだったなと、2021年になってみればぼくにもわかります。

だから、バリー・ギブが大好きで日頃愛聴しているというポップ・カントリー系の歌手たちを一曲ごとデュエット・パートナーに迎えつつ、ナッシュヴィルの名門、RCAスタジオAで、兄弟名義で書いた往年の自作曲の中から12曲をセレクトしてリメイクした企画のこの『グリーンフィールズ』は、ぼくみたいにかなり遅れてきたビー・ジーズ(再)入門者にはちょうどいいんですよね。

演奏は、ドラムス、ベース、ギター、ピアノ、オルガンなどリズム・セクションにくわえ、ストリングスが参加するといった様子。手練れの面々がこなしているその演奏のまろやかな味わいも格別ですが、さらにもっとグッとくるのは一曲ごとにそれぞれ異なったメンツが参加している歌手のみんなのヴォーカル・パフォーマンス、そして、なんといってもバリーの、年輪を経ていっそう濃くなったカントリー系のコブシまわしです。

1曲目からいい感じですが、ぼくが個人的に特にグッと来るのは4曲目。アリスン・クラウスを迎えてやっている「トゥー・マッチ・ヘヴン」です。アリスンの声がも〜う!なんて美しいのか!とため息が出ます。曲のフィーリングにぴったりで、これ以上ないすばらしくのびやかなヴォーカル・パフォーマンスですねえ。

3曲目、ブランディ・カーライルといっしょに歌っている「ラン・トゥ・ミー」も名曲ですよねえ。リトル・ビッグ・タウン&トミー・エマニュエルが参加の8曲目「ハウ・ディープ・イズ・ユア・ラヴ」だけはず〜っと前から知っていた曲のように聴こえますが、調べてみたらこれ、映画『サタデイ・ナイト・フィーヴァー』で使われたものみたいです。どおりで既視感があるわけです、高校生のころからぼくだって耳にしていたんでしょうね、このおなじみのリフレイン。

シェリル・クロウが参加している9曲目「ハウ・キャン・ユー・メンド・ア・ブロークン・ハート」なんかもほんとうに沁みる内容で、最高ですよねえ。沁みるのは歌詞が、ですけど、それをうまく伝えるバリーとシェリルの歌いかた、バンドのしっとり落ち着いた演奏ぶりで、歌が引き立つんですよね。

どんなすばらしい再演でも、結局はビー・ジーズのギブ三兄弟のハーモニーこそ最高なんだということを再確認してしまう結果になる、と健太さんはお書きですけれども、このバンドにリアルタイムでの思い入れが皆無な(世代なのにねえ)ぼくなんかにとっては、この『グリーンフィールズ』こそ至高の音楽と思えます。Vol.2もあるんでしょうか。

(written 2021.3.8)

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